門外不出の「技術戦略書」について、製品開発部門として何を目的にどうまとめるかについて解説します!

様々な製造業企業で、「技術戦略はまとまってますか?」と聞くと「もちろん」と返ってきますが、その中身はさまざまです。その会社の考え方ではありますが、より実践的で役に立つものにするためのポイントについて共有していきます。

製品開発に特化したコンサルとして、経営戦略、技術戦略の立案から展開までの支援を行ってきて、「技術戦略」を立てて実行する上での気づきをまとめてみました。

 

 

「技術戦略書」の目的と位置づけ

 

技術戦略を立てて、戦略書をまとめて戦略書にしたがって活動を展開するということの目的は何なのか、また技術戦略、あるいは「技術戦略書」の企業内での位置づけについて考えてみましょう。

戦略とは?

意外と多いのが、「戦略」に対する誤解なのです。

「戦略」ですから、競争に勝つ、あるいは競争に負けないことが大目的であって、そのための状況を分析して競争で負けないような策略を立てることが戦略です。

悪い戦略の例を挙げると以下のようなものがあります。

  • 美辞麗句で飾っていて中身がない、空疎である
  • 目先の問題を取り上げていて最も重要な問題に取り組んでいない
  • 高い目標を立てることを戦略と誤解している

戦略は、高い目標を立てて、現状とのギャップを知り、そのギャップをどうやって埋めていくかということです。

 

 

また、戦略はコミットではありません。

高い確率で高い目標を達成する、あるいは高い目標に近づけることが目的です。

そのために、正確な分析が非常に重要になります。

3C分析やSWOT分析などが有名ですが、自社の状況、競合や顧客の状況を客観的にかつ冷静に分析することが求められます。

 

戦略の構成要素は、

  • 分析・診断
  • 基本方針
  • 行動(計画)

の3つです。

分析に基づかないものは、勝てる戦略に結びつきません。

基本方針は、戦略の肝に当たる部分ですが、分析から導かれたシンプルで驚きの基本方針を立てたいものです。また、問題の一つ一つに対処方針を決めるのが戦略ではありません。大きな基本方針を立てて、それに従った行動に繋げていきます。

そして最も重要なことは、行動できないものは戦略とは呼べないということです。

参考記事:「開発組織の戦略立案3つの重要要素

技術戦略と経営戦略

技術戦略は経営戦略と密接に繋がっている必要があります。

上位である経営戦略を受けた形で、技術戦略を立てます。

 

 

経営の最大の目的は企業が存続し続けて儲け続けることです。

その最大の目的を達成するために、地域社会との共存などを図りながら、また企業ごとの独自の理念や考え方で様々なビジョンやミッションを設定します。

そして、ミッションやビジョンを達成して儲け続けるためには、競争社会で勝ち続けなければならず、そのための戦略が「経営戦略」となります。

経営戦略をブレークダウンする形で、営業戦略や各部門の戦略が立てられるわけで、製品開発部門としては「技術戦略」を立て実行することで、経営戦略の実行を助けます。

したがって、技術戦略は経営戦略つまり経営方針や企業のミッション、ビジョンを深く理解した上で、経営戦略をより確実なものにするものとして策定されるべきものです。

また、技術戦略は、営業戦略などとも連携していなければなりません。

ただし、大事なことは、経営戦略は絶対的なものではありますが、技術戦略として見出したものを経営戦略側にフィードバックする形で、技術戦略から経営戦略に影響を与えるようなことがあっても良いということです。

むしろ、技術サイドから経営に提案を上げる形で、経営に参画するように技術戦略を策定します。

他部門の戦略も同じように、それぞれが影響しあって、全社として最強の戦略にしていくという考え方が重要です。

技術戦略書の意義とアウトプット

非常に大雑把に言うと、技術戦略のアウトプットは、技術開発のロードマップを策定することです。

そして、技術開発のロードマップとは、どんな新技術をいつまでにどのレベルまで完成させるか、というロードマップです。

そのために、どんな組織体制で、どんなリソース配分で技術開発を進めるか、ということを決めていくのです。

そして、その結果、経営上のインパクト、売上や利益にどの程度貢献するかを明確にしていきます。

特に製品開発組織の技術戦略であれば、営業戦略との連携も重要で、製品のロードマップと技術開発のロードマップが一致していなければなりません。

市場に対してどんな製品をいつリリースしていくか、そしてそのために技術開発はいつまでに終わらせておくか、それによって企業がどんな収益を得ていくのか、ということがすべて繋がって初めて正しい戦略となっていくのです。

 

次に、技術戦略のアウトプットは技術ロードマップですが、もう一つ大事なことは、ロードマップを導き出す背景、根拠を明確にすることです。

技術ロードマップを導き出す根拠は、下記3つの分析結果を最大限に活用して独自のものを導き出します。

  • 自社の能力やDNA(Company)
  • 競合他社の動向(Competitor)
  • 市場や顧客の環境変化(Customer)

これら3つの要素を分析することを3C分析といいます。

また、自社の能力と環境を分析するのがSWOT分析(Strength、Weakness、Opportunity、Threat)です。

3CやSWOTによって、自社、競合、市場をどのように分析して、技術ロードマップを導き出したかという根拠は、将来、戦略による活動に支障が出た場合、あるいは予想通りの成果が得られなかった場合などに、戦略そのものを見直し、必要な修正をしていくときに欠かせないものです。

ここで注意すべきことは、分析から結論に導くロジックには、時として根拠が乏しかったり、個人の意見が強く反映されたりする場合も多く、分析から結論への繋がりをチェックするためにも、分析結果を技術戦略書にきちんと明記しておく必要があるということです。

 

 

技術戦略(書)の落とし穴

 

様々な企業で、技術戦略の策定、技術戦略書の作成に関わってきた経験から、陥りやすい落とし穴について説明します。

分析が不十分で勝てる戦略になっていない

戦略を立てる、つまりは基本方針を立てるときに最も重要なことは分析をしっかりと行うことです。

そして、分析は地道な作業であり、かつどこまでやったらいいという目標を設定しづらい作業なのです。

だから、やればやっただけ深まっていきますが、大してやらなくても目立ちません。

このようにして、落とし穴としてはどうしても分析が甘くなり、中途半端な形でまとめ上げて、結果、良い戦略が立てられないということになります。

分析作業の内容によっても違いがあります。自社分析は、社内で完結するので比較的良くまとまるのですが、競合分析、及び市場・顧客分析はノウハウがないとしっかりとした分析が出来ません。

競合分析は、特許を地道に分析したり、競合企業の公式な発表と、役員クラスのメディア上でのコメントなどを時間をかけて分析することで、客観的な情報をたくさん集めることが出来ます。

情報を集めたあとに重要なのは、分析結果から何を見つけ出すかという解析力をつけることです。

市場・顧客分析は、まさにマーケティング機能や今次レベルでのマーケティング思考力を鍛えることで、他社が掴めない独自の発見をすることが勝つ戦略を立てるためには必要です。

また、細かいところですが、3C分析をするときに自社、競合、顧客に関する現状の分析は比較的きちんと出来るものの、実は3C分析で最も大事なのは、将来に向けての動向を読むことです。

そこにも注意して分析を進めてください。

結果ありきの分析と戦略

技術戦略に限らず戦略策定で時々あるのは、結果ありきの戦略になってしまうことです。

この場合の結果とは何かというと、

  • 経営戦略で与えられたもの
  • 営業戦略の製品ロードマップ
  • トップが決めた技術ロードマップ
  • 昨年度の戦略書

経営戦略は、技術戦略の上位の戦略なので、従うことそのことは問題ありませんが、盲目的に従うのは、何のために技術の立場で分析をして結果を導こうとしているかがわからなくなります。

そして、技術の立場で分析し考察した結果、経営戦略の修正が必要であればそれを上申するべきなのです。

営業戦略の場合も同じことで、営業が作成した製品ロードマップありきではなく、技術の立場での検討結果と営業の要求を突き合わせた上で、よくよく精査して必要ならば新たなロードマップを提案すべきです。

トップの意向を忖度して、技術の立場での真の想いを犠牲にしてはいけません。

また、継続的に戦略のローリングをしている組織では、前年の戦略をベースに、出来るだけ修正はしないように戦略書をまとめようとするバイアスが働きます。

競合や市場の変化はますます速くなっています。

戦略のローリングであっても、新鮮な情報をもとに正しい判断をするようにしたいものです。

優先順位をつけられない

戦略の基本方針がしっかりとしていないと、何でもかんでもやるべきという方向に議論が進んでしまいます。

つまり、不要なものを捨てられないのです。

そして、リソースは無限ではありません。

自社のリソースで出来る範囲で、最高の結果、つまり収益を獲得するためには、選択と集中が必須です。

重要なところを選択してそこにリソースを集中して結果を出す、というのが戦略の基本です。

絞れない←基本方針が曖昧←分析が不十分、という因果関係が成り立っているのだと思われます。

経営戦略や営業戦略とリンクしていない

ここまでの説明を読んでいただければ理解いただけると思いますが、技術戦略だけが独立していては全社の戦略として機能しません。

経営戦略や他部門の戦略、特に営業戦略との連携は必須です。

また、すでにお話ししたように、経営戦略に盲目的に従うのもあまり良くありません。

お互いに、戦略による成果を大きくするために、戦略の内容を刺激しあうことも大切です。

 

強い「技術戦略書」のまとめ方

 

「技術戦略書」は、製品開発組織に必ず必要なものというわけではありません。

戦略はあるけど戦略書はない、という企業も少なからずあるのですが、ではその「戦略」は何ですか?と聞くと、あまり明確に答えていただけないことが多いように思います。

せっかく分析をして戦略を立てて、現在の行動計画に繋がっているのであれば、しっかりと文書として明確化し、組織内で周知するとともに、将来の環境変化に対する対応をスムーズに進められるようにしていただきたいと思います。

技術戦略書に記載すべき項目

技術戦略書に決まったフォーマットがあるわけではありません。

戦略書としてまとめるための順序なども企業によってマチマチだと思います。

記載すべき重要な項目を例としてピックアップしておきます。

  • 前振りパート
    • 経営課題の理解、経営戦略との連携
  • 分析・診断パート
    • 現状の環境分析(競合、市場)・・・3C分析
    • 環境に関する将来動向(競合、市場)・・・3C分析
    • 自社のリソース分析・・・(現状の活動状況と将来予測)
    • 自社の強みと弱み・・・SWOT分析
    • 環境変化に対する自社の立ち位置・・・3C+SWOT
    • 分析結果に対する考察・・・どのように基本方針に繋げるか
  • 戦略パート
    • 基本方針・・・分析から導かれた戦略の基本方針
    • 重点技術課題の説明・・・基本方針によって選択された重要技術課題
      • 技術課題の概要説明
      • 競合に勝つシナリオ、成功基準
      • 開発費、リソース計画、スケジュール
      • リスクと対応策
    • 収益計画(戦略全体のコストとリターン)
    • 基本方針で技術開発を進めるための課題と対応策(トップへの提案)
  • 行動計画パート
    • 技術ロードマップと製品ロードマップ
      • 営業戦略との連携
    • 開発体制の提案
    • 直近でのアクションプラン

※企業の状況によって追加すべきもの、不要なものがあります。

強い戦略は良い基本方針から

技術戦略書をまとめる作業を考えると、前段の分析のところと、最後のロードマップのところが分量も多く、まとめる作業時間も長くなるので、この2つが中心だと勘違いしてしまう傾向があります。

戦略策定の段階でも、分析やロードマップ作りに最も頭を悩ますことも事実なのですが、実は戦略で最も重要なのは基本方針です。

戦略の基本方針は、例えば織田信長の桶狭間の戦いで言うと、「細長い隊列を横から大将の居場所一点に集中して一気に攻め落とす」というのが基本方針です。

戦略の基本方針は、シンプルであって、かつ驚きのものが良い戦略だと言われます。

言い換えると、誰も気づかない、でも後から聞けば誰もが強く納得できるものであり、シンプルで、後は実行すれば良いというものが良い戦略の条件になるのだと思います。

強い戦略、つまり負けない戦略を立てるためには、分析やロードマップ作りに注力するのではなく、他社が気づかない、シンプルで驚きの戦略の基本方針を立てることに集中したいものです。

 

技術戦略書の策定でフューチャーシップが出来ること

 

製品開発革新に特化したコンサルとして、弊社は戦略に基づいた改革を非常に重要視してきています。

クライアント企業の経営戦略、中期経営計画、そして技術戦略の立案と実践でこれまで多数の支援をさせていただいています。

  • 戦略思考強化を個人や組織対象に実施する
  • 戦略立案そのものを支援する

弊社フューチャーシップは、上記2つの方法で戦略コンサル支援をさせていただきます。

戦略立案スキル強化セミナー

戦略に対する正しい理解をして、正しい戦略の立て方を習得していただくために、約4時間のセミナー(有料)をご用意しています。

オンラインの形で少人数にて定期的に行っていますので、ぜひご参加ください。

セミナープログラム:

  1. 戦略とは
    1. 先人の知恵
    2. 5つの競争要因(5 Force)
    3. 良い戦略と悪い戦略
    4. 経営戦略と技術戦略
    5. <ワーク>現状の戦略立案の問題点
  2. 戦略と3C、SWOT
    1. 戦略内容はなぜ今達成できないか
    2. 戦略策定のプロセス
    3. 顧客価値と競合優位性
    4. <ワーク>自社の弱み
  3. 時代を読み解く
    1. 3C分析と時代分析
    2. 自社のDNAを読む
    3. 競合と世の中の流れを読む
    4. <ワーク>時代分析

※プログラム内容は変更する場合があります。

 

戦略策定支援

種々の戦略策定・実行支援を行っています。

  • 経営戦略
  • 経営計画
  • 技術戦略
  • 組織改革戦略

戦略策定において、弊社コンサルタントが持っている下記の能力によって、勝てる戦略、正しい戦略立案をお手伝いします。

  • ファシリテーション力
  • 戦略策定の進め方、落とし穴などの理解
  • 製品領域に関わらず技術開発の肝を理解
    ⇒御社の技術者と技術開発計画の話を対等に出来ます。

ご興味があれば、問い合わせフォームよりご連絡ください。
(こちらからコンタクトさせていただきます。)