商品企画と製品開発を別々に考えるは正しいか?

市場や顧客を熟知して商品を企画するのは、営業との関係が近い商品企画部門の仕事であって、製品開発をするエンジニアは技術のことに集中させるという考えは正しいのでしょうか?市場の変化が激しい世界で、マーケティングの本当のありかたを知りたい。

製品開発プロセスに、ジョブ理論やマーケティング理論を早くから取り入れて実践してきた経験から、組織としてマーケティングにどう取り組むべくかをお話しします。

 

本記事の内容

  • 急速に進化するマーケティング理論
  • 製品開発エンジニアこそ必要なマーケティング脳力
  • マーケティング思考力の作り方

 

急速に進化するマーケティング理論

マーケティングって何でしょうか? 

ぜひ、周りの人に聞いてみたり、いっしょに議論してみてください。

おそらく、いろんな意見が出てくることでしょう。

  • 「製品を買ってもらうための仕組み作り」
  • 「効果的かつ持続的に売上と利益を生み出せる状況を作り出す」
  • 「労力や時間、資金といった限られた資源で、最大限の効果を得るための仕組み作り」

どれも正しいと思いますが、会社の売上とか利益ということにフォーカスしていますよね。

USJを立て直したことで有名な森岡毅さんは、その著書「マーケティングとは組織革命である」の中で、「マーケティングとは、市場に価値を創り出して適用するための一連の行動。企業活動全般に近い輪郭を持つ。」とおっしゃっています。

言葉のニュアンスの問題ですが、市場に価値を作り出す、という少し自社都合から顧客主導にシフトした表現になっているのと、会社の中の一部の機能ではなくて、全社で取り組むイメージが伝わってきます。

マーケティングの神様といわれる、フィリップ・コトラーは、自身の唱える「マーケティング3.0」の中で、「企業は消費者中心の考え方から人間中心の考え方に移行し、収益性と企業の社会的責任をうまく両立させるべき。」と言っています。

これってSDG’sのコンセプトのようですね。マーケティングという言葉の持つ意味も大きく変化しているように思います。

マーケティングというのは、古くからある言葉ではなく、20世紀になってから使われるようになった言葉で、フォードがT型フォードという自動車を大量生産して販売するようになったころから本格的に使われるようになったと言われています。

コトラーの定義によると、マーケティングは、作り手主導のマーケティング1.0、顧客主導に移行してSTPマーケティングといわれるマーケティング2.0、価値主導、ブランディングを大切にするマーケティング3.0のように進化し、今現在はSNSなどのWeb上での顧客行動が企業業績に大きく影響してくる世界になり、カスタマージャーニーを注視したマーケティング4.0に進んでいると言われています。

※ 参照「マーケティングの学び方

マーケティングの考え方が急速に変わっているということなのですが、要は市場が急速に変化していることに合わせて、マーケティングが変化せざるを得なかったということなのです。

ところが多くの企業の実態は、マーケティング2.0で止まっています。

セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングという市場を選択して、他社との差別化を意識して、市場で独自性を訴えながら競争に勝っていくという考え方が、生き続けていること自体は問題ないのですが、そこから先の市場や顧客行動の変化を取り入れたマーケティング3.0のような考え方、ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授が提唱するジョブ理論などの、新しいマーケティングの考え方についていけてない企業がたくさん出てきています。

森岡さんの言うように、マーケティングはもはや一部門が担当するレベルのものではなく、マーケティングを市場の急速な変化に追随しながら、全社で取り組まなければ競争に勝ち残れないのだと私は思います。

もし、マーケティングは、商品企画部門やマーケティングという名前がが付く部門が担当するものだと考えているとしたら、時代遅れの考え方なのかもしれません。

 

製品開発エンジニアこそ必要なマーケティング脳力

あなたの会社では、新規事業や新製品が次々と生まれる体制になっていますか?

私の知っている多くの日本の製造業は、長い間、既存事業、既存製品で収益を確保してきたので、今、新しい事業や新製品を生み出すために、大変な苦労をしているように思います。

既存製品は従来の製品の延長線上で、少し機能アップした製品を、同じ販売チャネルで、同じ販売戦力を使って売っていれば、おおよそ計画通りの販売、売上が得られるという事業、つまり持続的イノベーションを随分と長い間やってきたために、新しいことを考える力、つまり破壊的イノベーションを起こす力を企業が失ってしまっているように思います。

この20年くらい、日本企業から新しいコンセプトの製品や事業がなかなか出てこないように感じますがいかがでしょうか。

 

従来の製品からの延長線上だけでなく、本当に顧客が欲しい、しかも顧客もその潜在ニーズに気づいていない新しいコンセプト商品は、私はエンジニアでなければ生み出せないと思っています。

従来組織のいわゆる企画マンは、営業からの情報、競合との競争情報から、次機種のスペックを決めていきます。

これは、要するに目に見える、誰でも理解できる進歩を追い求める考え方であって、競合も同じようなことを考えるので、あとは一日単位の開発スピードの競争か、またはコスト競争になります。

競合が思いつかない、かつキャッチアップに時間がかかるような新しいコンセプト商品は、営業情報、顧客のダイレクトボイスからは生まれないのです。

顧客の潜在ニースを技術課題に翻訳し、技術革新を起こして、顧客にとっての新しい大きな価値を生み出せるのはエンジニアだけだと思います。

課題をしっかりと捉えられれば、その解決策のアイデアはエンジニアにとってそんなに難しいことではないように思います。

課題が明確に定まらないから、アイデアが出にくいのだと思っています。

だからこそ、エンジニアがマーケティングに深く関与する必要があるのだと思います。

 

マーケティング思考力の作り方

 顧客視点という言葉は、巷に溢れてますが、よくよく話をしてみると、製品がある上での顧客視点になっていませんか?

 顧客が製品を眼の前にしている姿しか見えていないのではないですか?

 顧客のやりたいことは、製品や製品の機能とは全く別のところにあるかもしれません。

 製品を使う前後の行動の中に、顧客が解決したいことが隠れているかもしれません。

 マーケティン思考力とは、製品軸から思考を完全に切り離して、顧客の行動、行為を考えるところから課題を掴む力だと思っています。

この脳力を鍛えるためには、顧客のストーリーを想像する力を養うことだと思います。

 

技術者にマーケティング思考力をつけるセミナーを提供しています。

概要:

  1. 技術主導、プロダクトアウトの限界
  2. 製品軸から顧客軸に思考シフト
  3. 顧客観察と質問力で真のニーズに迫る
  4. 戦略的なイノベーションの起こし方