商品やサービスが世の中に溢れ、市場の多様性が企業業績に大きな影響を与えるようになり、IT技術の急速な進歩によって、商品やサービスの提供形態が複雑化してくると、一社だけで競争に勝ち残っていくのがもはや困難な状況だと言わざるを得ません。

オープンイノベーション、つまり自社にないものを他社との協業、アライアンスに求めていく流れは、もう止めることが出来ないのだと思います。

ここ数年、大企業を中心に、ベンチャー活用が活発化しつつあって、日本でもオープンイノベーションは進行しつつあるように見える一方、企業間連携にはまだまだ企業内に抵抗や障害が残っていて、オープンイノベーションの進化の余地はまだ大きいのだと思います。

弊社で進めるジョブ理論のフレームワークを使って、事業のエコシステムを捉えることで、オープンイノベーションを活性化する方法をお伝えします。

 

 

事業のエコシステムとは

 

インターネット、特にモバイル通信技術の発達と普及によって、人々の生活スタイルはこの20年で大きく変わってきています。

市場に製品は溢れて、顧客から見た選択肢も無限に広がっていて、もはや製品単体や単独のサービスだけで顧客の満足度を勝ち取ることが難しくなってきています。

ハードウェアとしての製品、通信インフラを活用するサービス、アプリケーションサービスなどが合体して初めて顧客価値を生み出すということが頻繁に起こっていて、顧客もそれを良く知っています。

ここで、顧客にとって必要な満足度を得る単位、つまり複数の製品やサービスの連携した状態を、事業のエコシステム(生態系)と呼びます。

 

これまでの企業の価値観で、自社と顧客の関係をどう作って維持するか、顧客と共に企業も成長していくというような考えだけでは、変化のスピードについていけなくなるのだと思います。

自社の価値観ではなく、顧客の価値観が急激に変化、あるいは進化していることを受け止めて、顧客の価値観で考えたときに、企業がどうあるべきかという発想が必要なのだと思います。

すなわち、顧客は事業のエコシステムを単位として企業、あるいは企業群を評価するようになります。

そして企業のブランド価値は、企業が顧客の進化への欲求に対して、あるいはもっと広い視野で言うと社会全体の進化への欲求に対して、どのように行動するかによって決まってくるものだと思います。

自社の都合、自社製品やサービスに固執するのではなく、複数企業との連携を模索し続け、顧客の進化、社会の進化を助けようとする企業だけが生き残れるのだと思います。

さらに、顧客の進化、社会の進化への欲求を見つけるのが、マーケティング活動であり、弊社ではジョブ理論を使ってその答えを出していこうと考えています。

 

ジョブ理論のフレームワークを使って事業のエコシステムを発見する

 

ジョブ理論を実践するためのフレームワークを教えます」記事でも紹介したように、クリステンセン教授らが提唱するジョブ理論には明確なフレームワークがありません。

弊社で開発したジョブ理論のフレームワークは、製品とは関係なく、顧客の行動、すなわち成すべきこと(Jobs to be done)をストーリーとして捉えることから始めます。

参考記事:ジョブ理論とは (Jobs-To-Be-Done)-どう実践するかわかりやすく解説します
****ジョブ理論の考え方をわかりやすい言葉でお伝えします***

 

ジョブをストーリーとして捉えて、顧客の進化への欲求と繋げる

 

 

上図は、毎日の食卓の準備をする主婦(主夫かもしれません)のジョブ(やるべきこと)を水色の枠で囲んでストーリーとして繋げてみた例です。

今夜の食事のメニューを考えて、必要な食材などを買い物に行って入手し、持ち帰ったものを保管場所にひとまず仕舞って、料理をするときに必要なものを取り出して、実際に料理して、残ったものを保管場所に片付ける、というような行動がとられます。

このような顧客がやるべきこと(ジョブ)の連続で何かをしようとしていることを、弊社では下位のジョブとして捉えます。

そして、このような一連のジョブの連続を考える中で、顧客はどんな進化を目指しているかということを上位のジョブと考えます。

食事の準備ということに関わるジョブの上位にあるのは、例えば、「毎日の食事を楽に美味しいものを食べたい」という欲求があります。

すべての人がそう思っているかどうかということではなく、そのような想いを持っている人がある程度の割合でいると考えるのです。

「楽に美味しいものを食べたい」という欲求以外に、例えば、「食材を無駄にしないで食事を楽しみたい。」という人もいるかもしれないし、「健康を一番に考えた料理を食べたい。」ということを第一優先に考える人もいるかもしれません。

そんな多様な顧客の欲求がある中で、自社はどんな形で顧客、あるいは社会に貢献するかを決めるのが、会社のミッションであり、経営方針なのだと思います。

仮に、「毎日の食事を楽に美味しいものを食べたい」という欲求に応えることを会社として選択したならば、会社をその欲求を満足させるために貢献する会社と認知されるように努力を続けることが、ブランド戦略となります。

 

下位のジョブ、つまりやるべきジョブのストーリーを、上位のジョブ、つまり進化への欲求を満たすように進化させていくのが、ジョブ理論のフレームワークを使ったイノベーションプロセスということです。

上図の例で説明すると、顧客の「楽に美味しい料理を食べたい。」という進化への欲求(上位のジョブ)をかなえることを会社のミッションとする会社が、下位のジョブをストーリーとして捉え、上位のジョブと下位のジョブストーリーを繋げながらイノベーションを目指していきます。

 

ジョブに対するソリューションの連携がエコシステム

そして、次にやることは、それぞれのジョブに対する現状存在するソリューションを考えていきます。

例えば、食材を保管するというジョブに対する一つのソリューションは冷蔵庫になりますね。

他にも、お米だったら米櫃とかになるし、冷蔵庫の中でも冷凍食品は冷凍庫、野菜は野菜室などが顧客にとってのソリューションとなります。

食事のメニューを考える、というジョブに対しては、家族と相談する、料理本やテレビの料理番組からヒントをもらうなどもソリューションだし、最近ではレシピを提供するアプリなども簡単に入手できます。

買い物に行くは、スーパーマーケットは一か所で多くの食材を買えるので、顧客に便利さを提供しています。

また、オンラインショッピングは、外出するという手間を省いてくれるし、生協なども必要な食材を定期的に届けてくれるサービスを提供しています。

ジョブストーリーのそれぞれのジョブに現存のソリューションを書き出したものをソリューションマップと呼びます。

 

さて、出来上がったソリューションマップを見てみると、本当に身近な世界に様々なビジネスが存在していることがわかりますよね。

ジョブに対するソリューションは、そのほとんどに何らかのビジネス(事業)が関わっているということなのです。

ジョブのストーリーで、それぞれのジョブのソリューションを繋げることで、顧客にとっては利便性が増すということも理解いただけると思います。

 

この一連の家庭でのジョブストーリーを考えたとき、例えば冷蔵庫メーカーが何をすべきかということを、エコシステムの考え方が教えてくれています。

冷蔵庫メーカーが、冷蔵庫の性能や機能をブラッシュアップするという競争は当たり前の競争ですが、そこから顧客のジョブストーリーの中に入り込んで、食事のメニューを考えるソリューション、買い物を楽にするためのソリューションなどと連携することで、顧客の生活を「楽に美味しいものを食べたい。」という欲求に近づけることが出来るわけです。

ジョブストーリーの全体、あるいは出来る限り多くの部分をカバーできるソリューション群、言い換えると事業群をひとまとめにして、顧客にワンストップでサービスを提供することがエコシステムを構築することになります。

ソリューションマップからエコシステムを発見していくのが、弊社が提案するジョブ理論のフレームワークを使った方法です。

 


Amzonで見る

 

参考記事:

オープンイノベーションの本質を学べる「ワイドレンズ」

 

ソリューションマップからイノベーションアイデアを発想する

ジョブストーリーとそれぞれのジョブに対する現存のソリューションが出来たら、事業のエコシステムが見えるわけですが、次にやるのは、このソリューションマップから、顧客に進化への欲求(上位のジョブ)を満たすべきアイデアを出していきます。

アイデアを出すときの手掛かりは、現状のソリューションに対する顧客の満足度が低いところを見つけることです。

ジョブに対するソリューションが希薄なところは、新規参入がしやすいエリアになり、新たなビジネスを生み出すチャンスにもなります。

ジョブに対するソリューションはあるけど、顧客が不満を持っているもの、特に、顧客が現状を受け入れてしまって、不満を諦めてしまっているものは、潜在ニーズとなる可能性があります。

アイデア発想は、課題が明確になっていれば、良いアイデアを出せる可能性が上がります。

ソリューションマップから、様々な視点から課題を洗い出していきます。

例えば、夕食のメニューを考えてから、買い物をするときに、今現在、家に保管している食材をしっかりチェックして、足りないものを買い物リストに入れていかなければなりませんが、保管しているものを棚卸しする方法は、目で見てチェックするか、記憶に頼るしかないとすると利便性を改善する余地はまだあることになります。

冷蔵庫をメインの保管場所とするなら、あとどれくらい保管出来るかによって、買い物の量が制限されてきますが、どれくらいまで買いだめできるかを、主婦あるいは主夫の勘に頼っていれば、満足度はまだ上げられると考えられます。

顧客の立場になって、進化への欲求に対する改善の余地を考えながら、アイデア出しのための課題を整理して、そこからアイデア発想をしていくわけです。

 

 

オープンイノベーションによるアイデアの具現化

 

ソリューションマップから、事業のエコシステムを発見し、エコシステム全体で顧客の進化への欲求(上位のジョブ)を目指した課題を出すプロセスでは、これまでの自社製品の中だけに注目したアイデア発想では考えられなかった広い範囲でのアイデア発想になります。

ジョブに対するソリューションが、自社製品の中で解決できる場合と、自社の力だけでは解決できない場合があるわけです。

自社で解決できない、つまり自社内に技術やノウハウがないものを、素人考えでアイデア発想しても限界があります。

だから他社との連携、つまりオープンイノベーションが必要になるわけです。

 

オープンイノベーションの提携先

オープンイノベーションには、連携相手によって3つのパターンがあります。

  • 産学連携
  • ベンチャー企業との提携、又は買収
  • 企業同士のアライアンス

オープンイノベーションを進めるときに考慮しなければならないのは、

  • アイデア、技術の調達コスト
  • 利益配分
  • 技術、ノウハウの自社独占の可否

ということだと思います。

連携相手は、それぞれ一長一短があって、技術やノウハウの質の高さは、大学や公的研究機関は高い傾向がありますが、公共性という点があって、自社で独占することは難しいと思います。

企業同士のアライアンスは、お互いの利害が一致すれば独占できる可能性は高まりますが、利益配分は双方譲らずということが最も起きやすく、トータルの調達コストは高くなる可能性があります。

ベンチャー企業は、最近は日本でも元気な企業が増えていて、これから有望ですが、優良なベンチャーは大手企業が資金力で囲い込んでしまうこともあり、中小企業にとっては、誰も目をつけない原石を見つけ出すための、見る目を養う難しさがあるかもしれません。

いずれにしても、提携先は、一つに絞って見つけるのではなく、広い視野でアンテナを張っておくことが重要だと思います。

ソリューションマップから導き出した課題、及びエコシステムに対してブレることなく、提携先を見つける努力を惜しまないことです。

自社の差別化ポイントを見失わない

提携先を見つけるとき、絶対に忘れてはならないのが、相手から何かを得るだけでなく、自社の強みを絶対に持たなければならないということです。

オープンイノベーションで、時々起こるのが、とにかく自社にないものを得ようとすることだけを考えてしまい、提携がうまく進まないこととか、相手が他の会社とも提携しようとするとか、利益配分で自社のメリットが無くなるということです。

一番理想的なのは、相手の技術やノウハウと、自社の独自技術やノウハウとの組み合わせで、顧客価値が上がるようなアイデアです。

Win-Winの関係が無ければ、協業は進みにくいし、自社の差別化ポイントがなければ簡単に模倣されてしまって、競争優位な状況にならないことは、強く意識してください。

ジョブストーリーを作る時に、本来はあまり製品を意識しないことが大事ではあるのですが、自社製品の中と外との連携を少し意識してソリューションマップを作ることが、バランスの取れたアイデア発想に繋がるのだと思います。

 

アイデア実現の障害こそがイノベーションのエネルギー

良いアイデアを出して育てる手法としては、ブレーンストーミング、KJ法、MN法などが知られています。

どれもアイデア発想を助け、加速させる手法として優れていますが、弊社では特にMN法の考え方、異なる領域から類推でアイデアを借りてくる方法を推奨しています。

ダイソンの掃除機、サイクロン式が、製材所の集塵機からアイデアを借りて来たことをご存知でしょうか?新幹線の先頭車両の形状がカモノハシのくちばしから、洗濯機のパルセータ―が鳥の羽から、など、多くの発明が他の領域のアイデアを上手に展開することから生まれています。

いずれの手法を使っても、とにかく課題や、その先のゴール、すなわち顧客の進化への欲求さえしっかりと押さえておけば、必ずいいアイデアを育てられると思います。

この時、ジャストアイデアというか、まだ生煮えのアイデアだとしても、それを具現化できるようになるまで、しっかりと育てる方法、やり方を知っているかどうかが非常に重要です。

簡単に実現できるアイデアは、ある意味、追随されるのも容易なので、差別化になりにくいですよね。

具現化までの障害が大きいほど、アイデアの価値は高まり、イノベーションのエネルギーも大きいのだと思います。

「そんなこと無理だよ。」と言ってアイデアを殺してしまうことは、本当にもったいないことです。

アイデアを評価する能力というのもイノベーションを目指す組織には求められるノウハウだと思います。この辺は、ベンチャーキャピタリストがどういう基準でベンチャー投資を決めるかということとも共通するノウハウです。

弊社で推奨しているのは、リーン開発手法のなかのセットベース開発を使って、アイデアを育てる方法をとることです。

セットベース開発については、別記事「セットベース開発を理解する」を参照ください。

ライト兄弟が、一回の試作で飛行機を飛ばすことに成功したことをモデルにした、知識を積み上げていく開発手法ですが、未知のこと、チャレンジすべきことを、小さな実験を繰り返し、得られた知識を使って詳細設計していく考え方なのですが、まさに未知の領域に対して、挫折しながら新しいものを生み出すために最善の方法だと思っています。

既存製品のマイナーチェンジばかりをやってきた組織や技術者は、新しいものを生み出す基本に立ち返って、イノベーションを起こすことにチャレンジして欲しいと思います。

提携相手とのアイデア発想

オープンイノベーションで問題になるのが、知的財産の取り扱いですね。

特にいっしょにアイデア発想を行う場合に、権利の帰属先でもめることはよくあることです。

ただし、このことを恐れすぎては、オープンイノベーションの本来の意味が薄れてしまいます。

社会貢献のためのイノベーションを起こすためには、お互いに主力事業が競合していなければ、テーブルに乗せたアイデアはお互いにフリーで使えるくらいの度量が必要なのかもしれません。

提携先に対して広く公開してオープンに進める部分と、したたかに自社の利益を考える部分のバランスを取るのは、イノベーションリーダーの役割なのかもしれません。

 

まとめ

 

本当の意味で、顧客を出発点に事業を考えるべき時代になっています。

自社製品だけでは、顧客を完全に満足させることが難しくなっていることをご理解いただき、顧客の進化への欲求(上位ジョブ)を満たすためには、事業のエコシステムを構築し、エコシステムの単位でイノベーションを考えていただきたいと思います。

弊社のジョブ理論を使ったフレームワークで、

  • 顧客の進化への欲求(上位ジョブ)
  • 顧客のジョブストーリー(下位のジョブ)
  • ジョブストーリーに対する現存のソリューション(ソリューションマップ)

を作り、そこからアイデア発想していきます。

自社製品の枠を超えた新しいコンセプトを考えるとき、外部連携、オープンイノベーションを活用します。

正しい課題設定を維持して出てきたアイデアを具現化していく手法として、リーン開発のセットベース開発手法を用います。

弊社では、「リーン製品開発実践セミナー」を随時行っています。

セットベースの実践を検討されるなら、ぜひ一度、受講してください。

 

 

 

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