ジョブ理論とは何か? ジョブ理論を実際にどう使ったらいいか?

イノベーションの確率を上げるマーケティング手法として「ジョブ理論」が注目されています。改めて「ジョブ理論」とは何なのか?また、実際にどのように実践するのか、という疑問にお応えして、ジョブ理論の実践方法をわかりやすく解説します。

 

リーン製品開発やジョブ理論などを使って製品開発組織の改革支援をしてきた経験から、マーケティング活動、あるいは製品開発活動の中で、どのようにジョブ理論を活用するかをお伝えします。

 

 

ジョブ理論とは?


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「ジョブ理論」は2017年に日本で出版された書籍のタイトルで、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授の著作です。

この本の原本は、「Competing Against Luck」つま、、多くのイノベーションは幸運に支えられていて、その幸運に打ち克ってイノベーションを起こすということを主題にしています。

ジョブ理論は、Jobs To Be Done、つまり顧客が成すべき仕事ということを捉えることがベースになっていて、元々はAnthony Ulwickという人が提唱したODI(アウトカム・ドリブン・イノベーション)の考え方から発展したものとも言われています。

弊社では、Ulwickのジョブ理論をJTBD-Pと呼び、クリステンセンのジョブ理論をJTBD-Bと呼んで区別しています。(参照:「2種類のジョブ理論を使いこなす」)

ジョブとは何か?

ジョブ理論を理解するには、まず「ジョブ」をしっかりと理解する必要があります。

基本的には、顧客がやらなければならないこと全てが「ジョブ」であると言えます。

ただし、同じやるべきことでも、いくつかの種類があると言われています。

出来るだけ安易な言葉を使って説明すると、以下の2つになります。

  1. ある状況の中でルーチンのようにやっているジョブ
  2. 無意識、あるいは意識的な進化に対する欲求

クリステンセンは、著書の中、あるいは彼の講演でミルクシェークのプロモーションの話をジョブ理論の例として良く使っています。

アメリカで朝、一人で自動車を運転するビジネスマンにとってのジョブは、1のケースに当てはまり、毎日、1時間~2時間の退屈な自動車通勤を自分なりにうまく過ごす、というジョブを解決するために、毎朝、ミルクシェークを雇っていると考えるわけです。

2の例は、例えば女性用の化粧品に対する女性の見方を考えてみましょう。

もちろん、化粧品の成分など、製品を細かく見て購入をする人もいらっしゃるとは思いますが、女性はきれいでありたい、新しい自分に変わりたいという欲求を持っていて、新しい自分を発見するために化粧品を採用していると考えます。

そうすると化粧品のPRでは、化粧品そのものを売ろうとするのではなく、きれいな女優さんの姿を見せることで、顧客自身の「新しい自分」探しを支援することで化粧品を売り込んでいるというわけです。

1のケースのジョブは、1つのジョブに注目してイノベーションを起こしていく場合と、連続したジョブ、つまりストーリーとしてのジョブ・ステップでイノベーションを考えていく場合があります。

2のケースは、ジョブ単独で考える場合が多いのですが、2のジョブを上位のジョブとし、1のケースのジョブ・ステップを下位のジョブとして、2段階でジョブを捉えてイノベーションを考えていくケースもあります。

ジョブとニーズの違い

よく受ける質問(FAQ)ですね。

ジョブは前項で説明した通り、やるべきこと全てということなんですが、基本的には製品ありきではなく、製品とは無関係に必要なことになります。

ニーズは、顧客のその時点での要求と現実とのギャップを埋めたい希望なのだと思います。

ニーズは、多くの場合(必ずではないが)、現実に存在する製品に対する不満として表れることが多いのだと思います。

ただし、潜在ニーズという言葉がありますね。

これは、いわゆる「ニーズ」とは違うもので、顧客自身も気づいていない要求ということになります。

潜在ニーズの一つの考え方は、顧客が実際には不満に感じていながら、それはどうしようもないことと諦めてしまっていることを潜在ニーズとして捉えることがあります。

デザイン思考などでは、顧客の行動を観察して、顧客の何気ない行為を傍から見て、不自然なものを見つけることで顧客が諦めて我慢して受け入れていることを発見して改善していきます。

ジョブ理論は、ある意味、潜在ニーズを見つけるための方法であるとも言えるのだと思います。

 

 

ジョブ理論の実践方法

ジョブ理論を実践するためのフレームワークについては、別記事「ジョブ理論を実践するためのフレームワークを教えます」に詳細に説明してあります。

本記事では、フレームワークを少しかみ砕いて、ジョブの捉え方の違いから、イノベーションのアイデアを導く考え方について解説していきます。

JTBD-P(ODI)における考え方


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ジョブ理論の発端になったA.UlwickのJobs to be doneは、別名アウトカム・ドリブン・イノベーション(ODI、弊社ではJTBD-Pと呼ぶ)と呼ばれるものですが、ジョブの考え方はクリステンセンのジョブ理論と同じです。

この方法は、既存の製品を改善する形のイノベーションに向いていますが、機能ジョブをステップで分解していきます。

 

 

上図のように、何かの製品を顧客が使うときの大きな流れを想定します。

「定義する」というのは、まず何かの目的で製品を使うので、それを顧客自身が思い立つ、という程度に考えてください。

仕舞ってある場所から見つけてきて、準備して...のような実際に製品を動作させる前から、終わって片付けるまでの流れをステップとして捉えていきます。

上図は、あくまでジョブを整理するためのガイドラインのようなものなので、この図の通りにならないケースもあります。

無理にこの図に合わせないでください。

すべてのジョブを漏れなく抽出することが大事です。

洗濯機で洗濯することを考えてみます。

まず、洗濯を始めようと思うと、洗濯物を集める、別々に洗う場合は仕分けする、洗濯物を洗濯槽に入れる、水を入れる、洗剤を投入する...のようにやるべきこと(Jobs to be done)がストーリーとして抽出できます。

ODIでは、それぞれのジョブに対して、どんな結果(アウトカム)を期待するかということを考えていきます。

例えば、洗濯物を仕分けする、というジョブでは、「別々に分ける回数を出来るだけ減らしたい」、とか「分ける手間を減らしたい」というのが期待になります。

すべてのジョブに対して、アウトカムを定義していきます(1つのジョブに複数のアウトカムもあり得る)。

その後、一つ一つのアウトカムが、顧客にとってどれだけ重要か(重要度)ということと、現在のソリューションでどれくらい満足しているか(充足度)を捉えていきます。具体的には実際に顧客にアンケートを取るのが最も精度が高い方法です。

顧客の声を聴いて、重要度が高くて、充足度が低いものを発見して、そのアウトカムに対する新たなソリューションを考えて顧客に訴求していこうというのが、ODI、又はJTBD-Pの考え方になります。

 

JTD-Bにおける考え方➀ -正しいジョブを見つけてソリューションを改善


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現時点では「ジョブ理論」の主流といっても良いと思いますが、クリステンセンの提唱するジョブ理論(弊社ではJTBD-Bと呼ぶ)における考え方を説明します。

クリステンセンのジョブ理論は、Alan Klementの「When Coffee & Kale compete」と基本的には同じ考え方です。

JTBD-Bにおける実践方法の基本は、ミルクシェークの事例を考えていただくとわかりやすいと思います。

ひとつのポイントは製品の競合を正しく捉えることです。

長いドライブ時間を上手に使うというジョブを考えると、ミルクシェークの競合は他社のミルクシェークではなく、コーヒー、ドーナツ、バナナ、チョコレートなどになります。競合よりもうまく顧客のジョブに適しているから採用されているわけで、なぜ適しているかを考えて、さらに顧客のジョブをうまく片付けられるように改善していくことが正しいイノベーションの方向ということになります。

顧客のジョブを考慮した上で、競合を正しく見極めることでイノベーションの確率を上げます。

ミルクシェークの場合、味や見た目を改善することではなく、通勤途中の顧客に簡単に購入できるような販売方法や、量のバリエーション、あるいはもっと長い間飲んでいられるように粘り気を強めるなどが、通勤ビジネスマンに対する正しいイノベーションという考え方です。

JTD-Bにおける考え方➁ -ジョブが変化するタイミングを考える

顧客のライフスタイルを考えたときに、ジョブが変化をするタイミングがあります。

例えば、結婚するという変化、あるいは結婚して子供が生まれるという変化などを捉えて、変化によって生まれた新しいジョブに対してソリューションを提供するという考え方です。

食品のデリバリー・サービスを提供するベンチャー企業は、普段、仕事が忙しい独身の男性や女性に対するサービスを考えていましたが、実際の顧客のほとんどが、若いママさんということを掴みます。

色々と調査をしていくと、2人目の子供が生まれたことによって、買い物に行くことが困難になり、かつ家族と過ごす時間を充実させたいという新しいジョブが生まれたことを発見して、若いママをよりハッピーにするサービスを提案していきます。

JTD-Bにおける考え方➂ -習慣や心配事を先回りしてジョブのソリューションを考える

多くの人は、新しいソリューション、つまり新しい商品やサービスが提供されたときに、それまでの習慣や心配事のために、新しいソリューションを受け入れないことがあります。

欲求を制御する要素というように考えますが、この要素、特に習慣や心配事を先に考慮して手を打つことで、ソリューションを受け入れさせる考え方です。

Uberの例で考えてみます。

アメリカ西海岸で生まれたUberですが、もともとアメリカではタクシーはあまり便利な乗り物と認知されていませんでした。

いつ来るかわからない、不親切、だまされるなどです。

そんな中でUberという新しいソリューションを提供しようとしたわけですが、そもそもどんな人か運転するかわからないで危険はないのか、すぐに来てくれるのか、など、もともとのタクシーのときの心配事は何も変わっていないし、返って資格のないドライバーということを考えると、心配事はさらに大きくなるように思うのですが、それを解決したのがモバイル端末でのレーティングというシステムです。

顧客が運転者を、また運転者が顧客を評価することで、実績が証明されます。

また、モバイル端末上のアプリで現在位置がわかるので、どれくらい待たなければならないかも事前にわかります。料金も事前に合意できます。

顧客の心配事を解決することで、顧客は新しいサービスを受け入れることができるという事例だと思います。

ジョブの発見で良いソリューションを提供しようとしても、顧客がそれを受け入れない状況を事前に回避することでイノベーションを起こしていきます。

JTD-Bにおける考え方➃ -上位ジョブを会社のミッションに据える

書籍「ジョブ理論」の中で、私がもっとも好きなところなのですが、ユニリーバという会社が、使い始めて10秒経つと色が変わる石鹸によって、発展途上国の子供が、手洗いをしないことで命を落とすことを救うソリューションを提供したという話があります。

手洗いの習慣がない子供たちが、色が変わることで面白がって石鹸を使うようになることで、手洗いということを覚えさせるわけです。

このソリューションを生み出した背景にユニリーバという会社のミッションがありました。

ほとんどの企業は、企業ごとのミッションを抱えます。

このミッションの中に、具体的なジョブを据えることが出来れば、ミッションからイノベーションを起こすことが出来るという考え方です。

世界の子供たちの命を救う会社になりたい、という壮大な社会的ジョブの中で、せめて新興国の5歳以下の子供たちが手洗いをしないことで命を落とすことがないようにしたいという具体的なミッションに変わり、先の石鹸を生み出すことになります。

JTD-Bにおける考え方➄ -ジョブステップ全体を見て弱いソリューションを補強する

ジョブ理論の活用方法として、弊社がもっとも積極的に推奨している考え方です。

詳しくは、別記事「ジョブ理論を実践するためのフレームワークを教えます」で説明していますので参照ください。

簡単に説明すると、ルーチンとしてやっているジョブをストーリーとしてジョブステップに変換します。

下図は、毎日の食事のために食料品を購入して保管して使うということを取り上げたジョブステップです。

 

 

それぞれのジョブに対する現状のソリューション、つまり今使っている製品やサービスをリストアップしていきます。

リストアップされたソリューションを個別、あるいは全体を見渡すことで、現ソリューションに関する問題点を抽出してアイデアを出していくという考え方です。

顧客の行動を見ていくことで、顧客の日常に関連するソリューションや現存事業を俯瞰して見ることが出来て、たくさんの気づきが得られる考え方です。

 

 

ジョブ理論の実践を支援します

 

弊社は、ジョブ理論の現場での実践を得意にしています。

特に、製造業の製品開発現場で、これまで多くの企業でジョブ理論の実践をサポートしてまいりました。

上記の考え方は、その経験から出て来たもので、まだまだ説明しきれていないノウハウも持っています。

なかなか新製品や新規事業に関するアイデアが生まれない、あるいはアイデアは出ても実践出来ないなどのお悩みがあれば、ぜひとも弊社にご相談下さい。

下記フォームより、ジョブ理論についてのご相談と明記して無料相談の申し込みをしてください。

こちらから改めてご連絡差し上げます。

 

     

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