中小製造業で事業拡大するにはコア技術を応用したフラグシップ製品を出すのが最善策
既存事業で収益も頭打ちになって、新規事業、販路拡大などに真剣に取り組んでいる経営者は多いと思いますが、せっかく持っている技術の強みを活用するには、コア技術を応用できる製品を自らフラグシップとして作って技術をアピールすることで、提案型のビジネスに転換することができ、顧客層を一気に拡大できます。
コア技術の展開による事業拡大
部品供給メーカー、加工技術、生産技術をコア技術とする企業の場合
自社のコア技術、加工技術、生産技術などで競合他社との差別化をして、自社製品(部品)をセットメーカーに供給している企業は、顧客製品の中身を良く知らないケースが多いと思います。
自社技術に磨きをかけることに注力し、顧客であるセットメーカーからの要求に応えられるように日々努力をしているのですが、なぜその要求になるのか、製品側のことにはあまり深掘り出来ないことが多いのではないでしょうか。
顧客製品の原理を知り、なぜ自社の部品が使われているのか、顧客製品にどうやって貢献しているかを知ることで、自社部品の技術を応用して利用することが出来る他の製品の存在に気づくことが出来ます。
自社技術が様々な製品に対してどんな貢献をするのかをフラグシップ製品としてアピールすることで、対象製品を広げることが出来て、新規顧客の獲得に繋がります。
セットメーカーでコア技術を自社製品に使っている企業の場合
製品の最終形を製造・販売している企業で、製品の中にコア技術を持っていることで差別化をしている場合、コア技術を磨き続けること、あるいはコア技術を拡大していくことで競争力を維持する必要があります。
コア技術戦略で成功してきた企業の例としては、シャープの液晶技術、3Mの接着技術などが有名です。
富士フィルムは、写真用のフィルムで高いシェアを取っていました。その後、デジタルカメラの普及によって窮地に立たされますが、フィルム製造というコア技術を化粧品、医薬品などの新しい事業にコア技術展開することで大きな成功を収めています。
シャープの液晶については、半導体技術として液晶モジュールの製造・販売をコア事業にしながら、液晶テレビ、ノートパソコン、ビューカム、車載エンターテイメント装置などの最終製品でも強みを発揮して成功してきました。
垂直統合型の大企業では、コア技術展開は比較的に容易ですが、そうでない場合、自社製品の強みを支えるコア技術を他の製品に応用して、新たな事業にしていくのは難しいことではあるものの、顧客に新しい価値を提供して、競合に負けない製品になるのであれば、大きなチャンスになり得るのだと思います。
セットメーカーでありながら、コア技の強みを生かして、コア技術を切り売りする形で部品事業に参入することも出来ます。
この場合は、自社製品の競争力が維持できたうえで、競合企業にも部品を供給することで、トータルで自社の利益を上げられることが前提条件になるのだと思います。Sonyや東芝の画像読み取りセンサー(CCDセンサーなど)の事業がこのケースに当たります。
コラム : リファレンスデザインで成功した台湾半導体企業
2000年代初頭、液晶テレビやスマートフォンで市場が活況だったころ、台湾のメディアテック、エムスリーなどの半導体企業が急激に業績を伸ばしました。この原因は、彼らが自社の半導体チップを売るために、携帯の通信モジュールやテレビの制御回路モジュールを顧客の開発の参考のために、ソフトウェア込みのリファレンスデザインを作ったところ、中国メーカーや台湾ODMメーカーが、このリファレンスデザインごと購入して、そのまま製品にしてしまったことで一気に売り上げを挙げたと言われています。リファレンスデザイン=フラグシップ製品と考えてください。
コア技術展開を進めるための人材像
コア技術の展開によって、フラグシップ製品を企画し、新規顧客を獲得して事業拡大するためには、組織機能を強化して人材育成する必要があります。
組織機能あるいは個人の資質として必要なのは下記の3つです。
- マーケティング思考
- 技術の本質を理解・吸収する力
- フラグシップ製品を発想し企画・提案する力
マーケティング思考
顧客の直接の声でなく、顧客自身も気づいていない潜在ニーズを掴むため、新たなマーケティング手法の一つである「ジョブ理論」を使っていきます。
ジョブ理論を使った弊社独自のフレームワークを学び、実践の準備をしていくことになります。(参考:ジョブ理論を実践するためのフレームワークを教えます。)
※ 単独で、「ジョブ理論とマーケティング思考セミナー」も実施しています。
技術の本質を理解・吸収する力
自社の知識や経験のない製品でも、原理を推測していくことは出来ます。
推測の精度を上げたり、深堀調査の手掛かりを掴むために、弊社で進めているリーン製品開発手法のツールの一つである「因果関係マップ」を活用します。
因果関係マップは、製品原理を顧客価値変数と設計変数に分けて、両者を因果関係で結んでいくチャートであり、製品開発の中で様々な利点をもたらすツールです。(参考:因果関係マップを活用して製品開発革新を加速させる。)
因果関係マップを使って、ターゲットとなる製品の原理を理解し、自社のコア技術が貢献できる実態を明確化します。
フラグシップ製品を発想し企画・提案する力
アイデアや方針が決まったところで、戦略的なアプローチ、あるいは実際に製品を作っていくときの技術的な障害や対応方法などを先回りで考えて、実現可能なプランを策定し、会社の上層部に提案します。
戦略アプローチ、プロジェクトマネージメントなどの基礎的な能力と、実行力を伸ばすことが重要になります。(参考:ものづくり企業の収益改善を目指した製品開発戦略の立て方)
コア技術展開を行うための人材育成プログラム
コア技術を使ったフラグシップ製品を企画し事業拡大を先導することが出来る人材育成、あるいは中小製造業の未来を担う幹部候補を育てるための育成プログラムを主として企業研修の形で提供します。
4時間/回で6回シリーズを基本プログラムとして提供します。
企業ごとにカスタマイズも可能ですので、ご相談ください。
- 第1日 製品開発の基本(4時間)
- 製品開発とは? 製品開発のジレンマ(様々な選択肢)
- トヨタの開発手法(なぜトヨタは成功しているか)
- コア技術戦略の成功事例
- 持ち帰り課題:自社のコア技術は何か?
- 第2日 顧客価値を知るマーケティング(4時間)
- マーケティングとは何か?マーケティングの進化
- ジョブ理論による顧客価値の発見
- ジョブ・ストーリーから新規事業を創造する演習
- 持ち帰り課題:自社の顧客のジョブ・ストーリー
- 第3日 製品原理を分解する(4時間)
- 製品のトレードオフを理解する(トレードオフ曲線)
- 製品の原理を因果関係マップを使って追いかける
- 因果関係マップの作成演習(身近な製品の因果関係マップ)
- 持ち帰り課題:自分の好きな製品の因果関係マップ
- 第4日 技術戦略の立て方(4時間)
- 戦略とは?技術戦略のアウトプットは技術ロードマップ
- 3C分析とSWOT分析
- 自社技術を誰に買ってもらうのか?
- 持ち帰り課題:自社にとっての新たな顧客候補を選別する
- 第5日 フラグシップ製品の企画(4時間)
- 自社技術を新しい顧客に採用してもらうためのプラン
- フラグシップ製品の因果関係マップ
- フラグシップ製品の試作に必要な技術要素
- フラグシップ製品の開発計画書→終わらないものを課題
- 第6日 フラグシップ製品の開発計画書発表会(4時間)
- 各自の成果発表(上司参加)
本育成プログラムは、基本的には企業向けに提供する企業研修プログラムです。
少人数の場合でもご相談ください。人数やご予算に応じて内容を調整してご提案することも可能です。
下記フォームより、「コア技術戦略展開人材育成」に関する件として個別にご相談ください。
フォームを受け取り後、こちらからご連絡させていただきます。