ナレッジマネージメント改革を全社で進めているが成果が出ないのは何故?

失敗学も勉強した。トヨタのA3報告書も研究したことがある。全社の課題でナレッジマネージメント進めているが、3年経っても成果が出ない!!何か間違ったやり方をしていないかチェックしたい!

 

ベテランが定年退職となると、会社からノウハウがいつの間にかなくなってしまう。

同じ失敗が繰り返されている。

ナレッジマネージメントを進めようとするときの動機はこのようなことが多いのだと思います。

でも、課題としては理解しますが、ナレッジマネージメントによって何をどうやって成し遂げるのかという道すじを設計しないまま進めていませんか?

失敗しないナレッジマネージメントの秘訣についてお話しします。

 

 

ナレッジマネージメントの大いなる誤解

 

何度も繰り返し言って来たことですが、”ナレッジマネージメント”を誤解している”人”や”組織”が非常に多いと思っています。

最も多い、そして重大な間違いは、

ナレッジマネージメント=文書情報の蓄積と共有

と考えることです。

もっとわかりやすく言うと、ナレッジマネージメントを「文書管理システム」と読み違えてしまうことです。

 

具体的な間違った行動事例は、

  • 文書(報告書など)蓄積を奨励、推進する
  • 蓄積された文書をキーワード検索などで必要に応じて閲覧できるシステムを作る

つまり「社内に情報は多数存在するのだから、あとは使いやすくすれば問題解決する」

という施策を展開し、一所懸命、使い物にならない文書(報告書など)を貯めこむこと。

さらに、あまり価値のない文書情報(報告書など)を検索するシステムを作って、それで満足してしまうこと。

なのです。

もっとはっきり言うと最悪のシナリオは、読まれない、活用されないゴミの山を作って、IT技術を使ったほとんど使われない検索システムを作り上げたことだけで、自己満足的な自己評価をして、成果を確認しないままでナレッジマネージメント・プロジェクトを終結させてしまうことです。

思い当たるところはありませんか?

ナレッジマネージメントに関わっている皆さん、自分たちはどこに向かっているか、もう一度考えてみませんか??

 

ナレッジマネージメントの本質的な目的は何なのか???

この議論が大きく抜け落ちていると私は思っています。

IT環境の進化、という技術シーズに騙されていませんか?

具体的に、今の会社のどんな状況を、どういう状況に変えたいのでしょうか?

何を変えたいのか?(As is)

何に変えたいのか?(To be)

この2つの疑問としっかり向き合ってみませんか?

 

ナレッジマネージメントが目指すべきもの

 

結論から言ってしまうと、組織の中でナレッジマネージメントが目指すべきものは、

  • 学び続ける個人と組織へ変革させること
  • 失敗から学ぶことで、会社を成長させ続けること
  • 組織の知識を結集することから、イノベーションを生み出すこと

の3つだと思っています。

つまり、ナレッジマネージメントの目的は、組織を進化させることなのです。

そして、組織が進化したことの結果として、

  • 組織の仕事の質が大幅に向上すること
  • イノベーションが継続的に起きること

をしっかりと測定することがとても大事なのです。

逆に言うと、これらの成果が出せない「ナレッジマネージメント」は、まったく意味がないということなのです。

 

ここでもう少し具体的に、目指すべきものを考えてみましょう。

そのためには、今、組織の問題、課題がどこにあるかということを考える必要があります。

例えば、「品質問題が多発している」ということが最重要課題だったとします。

なぜ「品質問題が多発している」のか?

  • 品質チェック体制が悪いのか?
  • 設計者の実力不足なのか?
  • 顧客要求をしっかりと理解できていないのか?
  • 情報が共有されずに同じ失敗が繰り返されているのか?
  • ベテランのノウハウが若手に継承されていないのか?

どこが本当の問題なのか?

原因は一つではなく、複数の原因の組み合わせかもしれません。

では、その組織として最も重要な問題である「品質問題が多発している」という問題の本質をとらえて、それを『ナレッジマネージメント』によって解決できるのか?

ということが非常に重要な思考であるべきということなのです。

ナレッジマネージメント』というテーマに何となく取り組むのではなく、具体的な課題と結びつけるということが、多くの現場で意外と出来ていない気がします。

 

より具体的な問題についても見てみましょう。

よくあるのが、「同じ問題を繰り返す」ということではないでしょうか?

言い換えると、組織内で起きた失敗が活かされていない、ということかと思います。

 

余談ですが、マシュー著「失敗の科学」では、

たった100年くらいの歴史であるにも関わらず、世界でもっとも安全な乗り物になった航空機業界と、失敗が隠蔽されやすく個人の責任が追及されやすい医療業界を対比しながら、失敗を活かし業界全体で変革し続けることの価値を教えてくれます。

失敗を活かして組織を強化することこそが、ナレッジマネージメントであるというわかりやすい事例かもしれません。

繰り返しに成りますが、「ナレッジマネージメント」で何を目指すのか?

ナレッジマネージメントを実施することでの目指すべき成果を強く意識してみてください。

 

施策の質よりもモチベーションの高まりが成功のカギ

 

ナレッジマネージメントに限ったことではありませんが、これまでの経験から言えるのは、組織を良くするための新しいシステムや仕組みは、それを導入しただけでは絶対に成果を出すことは出来ないと思っています。

正しいシステムや仕組みはもちろん重要です。

しかし、新たなシステムで成果を出すためには、実行するメンバーのモチベーションの高まりが不可欠なのです。

モチベーションの高まりは、メンバーの賛同があることが前提で成り立つものであって、さらに言うと、メンバーの賛同を前提にそのシステムや仕組みが文化として定着することに繋がります。

ナレッジマネージメントを達成するためのシステムが、文書管理システムと検索システムであって、その目指すところが曖昧であればメンバーの賛同は得られないように思います。

でも、多くの企業でナレッジマネージメントを文書管理システムと検索システムで実践しているのを見てきました。

そしてその考え方で成功した例を知りません。

 

このような表面的なシステムを作り上げてしまう施策は、なぜ生まれるのか?

その原因は、一番大きいのは、先に述べたように目指すべきものが不明確であるということなのですが、もう一つには、その施策で本当に成果を出せるかをしっかりと評価しないで施策を実行に移してしまうことが原因と考えられます。

つまり、文書管理システムと検索システムを充実させることで成果が生み出せるということに対して、誰も疑問を持たないこと。これが致命的な問題だということなのです。

特に上層部の人が「この施策で行く!」と言えば、誰も反論できない状況になり、施策によって成果を出せる道筋が評価されないまま、そもそも何を目指すのかが不明確のまま、システムが完成したことだけが評価として残って、実は会社組織はまったく改善されないままということが往々にして起きるということです。

 

これまで組織改革を何度も経験してきて、成功するパターンは、メンバーのモチベーションだと確信しています。

新しいシステムや施策は、メンバーのモチベーションを変えるための道具に過ぎないと思っています。

つまり、そのシステムがメンバーに賛同されず、モチベーションを向上させなければ、どんなに論理的に正しいシステムであっても成果は出ないということです。

言い換えると、上からの押し付けでなく、現場の納得感が重要だと言えます。

参考記事:「TOC思考プロセスでUDEを使って組織問題の本質を突き詰める」

 

本当の人材育成は学習する組織からしか生まれない

 

人材育成は、”知識”、”考える力”と”行動”だと思っています。

座学による知識吸収も必要な学習ですが、それを自身の考える力と行動力に繋げなければ意味がありません。

OJTが大事だというのは、このような背景もあるのだと思います。

一方、育成される立場から言うと、指導してくれるメンターの質によって育成の成果に差が出ることが気がかりです。

指導のうまい人に就ければラッキーというわけです。

しかし、これも経験から言わせていただくと、メンターの質に依存している限りは、その人の育成にも限界があるように思います。

学習する意欲は、指導者には関係が無く、その人そのものの意欲です。

そして、最も効率の高い人材育成は、「学習する意欲」を与えることだと思うのです。

さらに、指導者の質に関わらず、すべての育成対象者が同様に「学習する意欲」を獲得するためには、常に「学習する組織」を生み出すことなのです。

 

では、「学習する組織」、「学習し続ける組織」はどのように生み出せるか?

これが、もう一つの「ナレッジマネージメント」が目指すべきものだと私は考えています。

 

  • 組織内の知識を獲得する → すべての人が組織内の知識共有を目指す文化
  • 組織内に知識を提供する → すべての人が新たに生み出した知識を組織に提供する文化
  • 失敗から学ぶ → 失敗を繰り返さない、失敗から学んで新しいものを生み出す文化
  • 今ある知識から新しい知識を生み出す → 組織内の知識をベースにイノベーションを生み出す文化

 

ナレッジマネージメントは、社内の組織を結集して、そこから新しい知識を生み出すことで、組織能力を最大化する文化だと私は考えます。

そして、ナレッジマネージメントは、学習し続ける組織を生み出し、最高の人材育成システムになるのだと思います。

 

参考記事:

「リーン製品開発の完成形は本物のナレッジマネージメント・システム」

「失敗学から学ぶA3報告書ナレッジマネージメント」

 

リーン製品開発の導入、報告書の質を高めて本物のナレッジマネージメントの実践を検討している方は、ぜひお問い合わせください。

 

 

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