

TOC(制約の理論)の思考プロセスでUDEを深堀すると問題の本質が見える
TOC(制約の理論)を使って課題解決をするときに、まずは現状を正確に捉えるためにUDE(Undesireble Effect;好ましくない状況)を捉えていきますが、このUDEを深掘りすることで、問題の本質が見えやすくなります。
クライアント企業とともに、組織改革戦略にTOC(制約の理論)の思考プロセスを導入し実践してきた経験から、問題認識のための基本要素であるUDEについて、詳細に掘り下げて解説していきます。
TOCのおさらい
TOC(制約の理論)は、イスラエルの物理学者であったエリヤフ・ゴールドラット博士が開発したと言われ、2001年に「ザ・ゴール」という本で日本に初めて紹介されました。
TOCの思考プロセスに関しては、別記事「TOCとは ~製品開発にも適用できる制約の理論」で解説していますので、詳しくはそちらを参照ください。
TOCの思考プロセスでは、まず、「何を変えるか」、つまり現状の根本の問題は何かということを突き止めていきます。

このときに、上図のように起きている症状一つ一つに手を打つのではなく、一つ一つの悪い症状は因果関係で連鎖していて、根本の原因を追究することが大事だとTOCでは考えています。
この一つ一つの悪い症状のことを、UDE(Undesirable Effect ; 好ましくない症状)として捉えます。
組織課題の解決を行う時には、このUDEを出し切るところから始めて、その後、UDEがどのように連鎖しているかを因果関係でつないだ現状ツリーで表していきます。
開発組織において現状を把握していく事例を下記の参考記事で説明していますので、そちらもぜひ参照ください。
UDEの作り方とチェック方法
UDEは明確な文章で表現します。
よくある間違いは、例えば「コミュニケーションの停滞」とか「売り上げの低下」などのように名詞句で表現してしまうことです。
曖昧さを排除するために、必ず文章で表現します。これが最初のルールです。
それ以外には以下のような注意点があります。
- 本当に悪いことなのか?
→一見悪いことのように聞こえるが、それは本当に悪いことなのか? - 本当にそういう事実はあるのか?
→感覚的、感情的になって事実でないことを言っていないか? - 解決策が出来ていないことを言っていないか?
→解決策ありきで言っていないか? - 悪いことであっても絶対に解決できないことではないか?
→物理的に解決できないことを言っていないか? - 複数の文章になっていないか?
→複数になっていればUDEを分ける
UDEを作成したら、文章になっているかということと上記の5項目、トータル6項目のチェックを行います。
トヨタのリーン製品開発手法の本質を捉え、
若手エンジニアのモチベーションによる改革を目指し、
トヨタの真似でない独自の世界観で
組織改革に挑む姿を描いています。
詳しくは、「製品開発組織の常識をぶち壊せ!!」出版のご案内を参照ください。
UDEを「だからどうなる?」で問い詰める
UDEを実際の例で見ていきましょう。
製品開発組織で共通的に挙げられる下記の15個のUDEを例にとります。
- 雑用に多くの時間が取られている
- 責任者が不明確になっている
- 手戻りが多発している
- 失敗を糾弾される
- 同じような失敗が繰り返される
- 製品全体を理解できる技術者が減少している
- 若手の離職率が上がっている
- 新たなコンセプト製品が長い間生まれていない
- ベテランの知識、ノウハウが会社に残っていかない
- 他の人の仕事内容、状況がわかっていない
- 日程遅れが常態化している
- 自主的なアイデアの試作や提案が出来ていない
- 若手が技術力の伸びを実感できない
- ノウハウが資料として残っていない
- 顧客の真の課題、潜在ニーズを把握できていない
例えば、「手戻りが発生する」というUDEが起きると、だからどうなる?で考えると例えば「日程遅れが常態化する」などに繋がっていきます。
上記15個のUDEのうちの2つが因果関係で繋がりました。
次に例えば「若手が技術力の伸びを実感できない」というUDEに、だからどうなる?と自問してみると、「モチベーションが下がる」という上記15個には含まれていない新たなUDEが出てきます。
さらに、「モチベーションが下がる」とどうなるかを考えると、例えば「若手の離職率が上がっている」に繋がります。
次に、本当に悪いことなのか、ちょっと疑問が残りそうな「他の人の仕事内容、状況がわかっていない」というUDEを考えてみます。
これだけでは、本当に悪いことかどうかわかりづらいので、では、こういう状態になると次にどうなるかを考えます。
「意思疎通がしづらくなる」ということがあるかもしれません。では、「意思疎通がしづらくなる」とその先どうなるかを考えると、「頻繁に打ち合わせが必要になる」ということが起きて、「雑用に多くの時間が取られる」に繋がり、その結果、「日程遅れが常態化する」に繋がります。
このようにしてUDE同士の因果関係をすべて繋いだものが、現状ツリーということになり、現在の組織の状態、悪い症状が連鎖的に起こっている様子を見える化することが出来ることになります。(下図は現状ツリーの例)

因果関係で繋がった現状ツリーは、矢印の元が原因で、矢印の先が結果という繋がりになります。
この矢印の元を辿っていくと、すべての問題の根本原因になることになります。
上図の一番下のコアクラウドのジレンマというところが、すべての問題の出発点、すなわち根本問題ということになります。
TOCの基本的な考え方は、この矢印の大元の根本問題が組織のボトルネックであり、ここを強化することでほぼすべての問題(矢印が繋がっている問題であれば)を改善することが出来るということになるのです。
反対に、矢印の先は、問題が広がっていく様子を示すことになります。
例えば、単純に15個すべてのUDEが起きると、その結果どうなりますか?という問いには、「利益が落ちる」ということが考えられます。
様々な問題が重なり合って、最終的に利益が低下するという重大問題を引き起こすことを示しているわけです。
ここで念のための確認ですが、実際にその企業で利益低下が起きていなければ問題、つまりUDEにはならないのですが、逆に、これだけ悪い症状があって利益が落ちない、あるいは上がっているとしたら、それはそれでうらやましい限りですね。
別の見方をすると、根本問題の解決をすれば、上図とは逆の因果関係が起きて、最終的にはもっと利益が上がるようになるかもしれません。
さて、UDEに対して、「だからどうなる?」を自問していくと、UDE同士の連鎖を掴むことが出来、その結果
- 本当に悪いことは何かを突き止めることが出来る
- 負の連鎖を明確にすることが出来る
ということになり、課題解決のための現状認識を正確なものにすることが出来ます。
TOCの思考プロセスで課題解決をしていくときに、UDEの「だからどうなる?」での深堀りをぜひ実践してください。
UDEを客観的に解析するのがクラウド(対立解消図)
UDEは、組織内で起こっている悪い症状です。
簡単にいうと組織問題ということですが、それぞれのUDEがなぜ起こっているのか、UDEの背景は何かというのを解析するのがクラウド(対立解消図)ということになります。
TOC(制約の理論)では、組織問題、つまりUDEは人の行動が引き起こしていると考えます。
しかし、ここで誤解してはいけないのは、人が何か悪いことをして問題を起こしているのではない、ということです。
人の行動のジレンマ、つまり対立が問題を引き起こすと考えるわけです。
何の対立かというと、組織が目指す大きな目的があり、その大目的に向けて複数の中間目的があるときに、その複数の中間目的を達成するための行動が、両立しない、つまりどちらかを選択しなければならず、もう片方の行動と中間目的を諦めなければならない状況で、問題が起きると考えます。
組織内に存在するジレンマ、つまり対立が問題を起こすことから、対立解消図(クラウド)を使って問題を表現するわけです。
クラウド(対立解消図)の作り方、演習方法については、「TOCのUDE、クラウド(対立解消図)で問題の本質を読み解くトレーニング」を参照ください。
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