2020年が明けました。
弊社の3期目のラストクォーターが始まったわけです。

今年、そして4月からの2020年度は、より多くの製造業の皆様とお仕事をさせていただき、組織改革、製品開発革新、人材育成などで大きな成果を上げていく所存です。

組織問題を悪い症状(UDE)として捉える

さて、これまで様々な製造企業の開発部門とお仕事をさせていただき、それぞれの組織問題をいっしょに解析し、課題解決のお手伝いをしてきましたが、どうやら多くの開発組織が同じような問題を抱えていて、その根本の原因にも多くの共通性が見られることがわかってきました。

多くの企業における開発組織の問題の共通性を解き明かすため、TOC(制約の理論)のフレームワークを使って、問題を構造化してみたいと思います。

TOC(制約の理論)のフレームワークの簡単な説明を入れながら、数回の連載の形で開発組織の問題の共通性を読み解いていきます。

最初に、この解析の対象となる企業はどんな企業だったかについてお話しします。

業種でいうと、計測器メーカー、精密機器メーカー、家電メーカー、金属素材メーカー、医療機器メーカーなどが今回の解析の対象です。

共通しているのは、ある主力の製品群を持ち、主力製品で収益の大部分を稼いでいるものの、主力製品にばかり頼っていられず、主力製品を継続しながら新製品や新規事業を起こすことを考えている企業になります。

TOCのフレームワークの基本として、まず最初に「何を変えるか」、つまり現状どんな状態になっていて、変化させなければならない状態を明確化していきます。

そのための最初の作業は、組織の中で実際に起こっている悪い症状、悪い状態を明らかにしていきます。

現場の人たち、ミドルマネージャ、経営層の人たちのそれぞれの想いとして、起きている現象を捉えていきます。
この段階で、階層間での認識ギャップが出てくることもありますが、大事なことは”事実”ベースで現象を捉えます。

この実際に起こっている悪い症状のことを、TOCではUndesirable Effect(UDE、ウーディと呼ぶ)と言います。

UDEは、ルールとして明確な文章、つまり誰々が、何々を、XXする、あるいはXXしている、のような文章として表します。
文章にする理由は、曖昧さを無くし、個人の思い込みをできるだけ排除するためです。

ただし、せっかく文章にしても、曖昧さが残ったり、思い込みが入り込む可能性は多々あります。
そこをセルフチェックする方法もあるのですが、ここでは詳細は省略します。

これまで複数の製造企業で、UDEを検討してきて、共通で挙がったUDEを以下に列挙します。

  • 雑用に多くの時間が取られている
  • 責任者が不明確になっている
  • 手戻りが多発している
  • 失敗を糾弾される
  • 同じような失敗が繰り返される
  • 製品全体を理解できる技術者が減少している
  • 若手の離職率が上がっている
  • 新たなコンセプト製品が長い間生まれていない
  • ベテランの知識、ノウハウが会社に残っていかない
  • 他の人の仕事内容、状況がわかっていない
  • 日程遅れが常態化している
  • 自主的なアイデアの試作や提案が出来ていない
  • 若手が技術力の伸びを実感できない
  • ノウハウが資料として残っていない
  • 顧客の真の課題、潜在ニーズを把握できていない

いかがですか?皆さんの組織と共通性はありますでしょうか?

まず、上記の15個のUDEについて考えていくことにします。

さて、上記のUDEは、一つ一つが組織問題と言うことが出来ると思います。
通常、多くの組織、多くの企業では、これらの問題点(UDE)一つ一つに対策を考えていって、手を打とうとします。

多くの企業の活動計画や、戦略書を見ると、課題リストのようなものが作られ、上記のような問題点がリスト化され、それぞれに対策案や施策と題して、やるべきことが書かれています。

私の経験でも、こんな資料をたくさん見てきましたが、この10個以上の問題に対する個々の施策が実行されて、10個の問題がある一定期間で解決された事例を私は一度も見たことがありません。

そう、絵に描いた餅になっているのです。

TOCの考え方は、これらの15個のUDE(問題)は、実は一つか二つ、つまり少数のコア問題から連鎖的に発生していると考えます。

言い換えると、少数(理想的には1つ)の根本原因があって、そこから多くの(場合によってはすべての)問題が発生していると考えるのです。

上図の例のように、背中が痛んだり、寒気がしたり、熱が出たり、それぞれの症状に個別に手を打っていくのは、対処療法になって真の解決に結びつきにくいと考え、それぞれの症状を総合して、真の原因が肺炎であると特定してから、そこに集中して手を打つことで結果的にすべての症状を抑えるというのがTOCの考え方になります。

次のステップとして、挙がった複数のUDEから根本原因を見つけていくのですが、このとき、対立解消図(クラウド)というものを使います。

クラウド(対立解消図)は、個々の問題(UDE)が起こっている背景を、シンプルに的確に、そして思い込みを排除しながら問題の構図を表現するツールで、クラウドを作ることから問題解決の糸口を見つけていきます。

TOCでは、組織の問題はすべて人間の行動によって起きると考えます。

また、組織内の問題は、誰か犯人(あるいは悪人)がいて起こしているのではなく、組織活動を成り立たせているトップの方針があって、そのトップの方針のもとに複数の中間目的、言い換えるとトップ方針の達成度を評価するための評価基準が複数あって、その複数の評価基準に基づいた行動がまったく両立しない状態になり、どちらか片方の行動しかとりえないジレンマに陥ることで、問題が発生すると考えます。

 

上図のように、方針、評価基準、行動という3段階で、同じ方針にしたがっていながら、異なる評価基準によって相反する2つの行動が生まれて、その一方の行動によって組織問題が起こると考えるのです。

そのジレンマの様子をクラウド(雲という意味)でシンプルに表現していくことで、問題解決につなげます。

次回は、この対立解消図(クラウド)の作り方を説明し、15個のUDEから一つのUDEを例として取り上げて、実際にクラウドを作っていきます。

第二回「クラウドの作り方」へ