トヨタ式リーン開発手法は、もともとアメリカのトヨタ研究者の先生たちの調査を元にして体系化、理論化されたものです。

理論からは、もちろん様々な学びがありますが、実際の製品開発現場に適用して実践していくためには、しっかりとした戦略、および戦略に基づく行動計画がなければなりません。

フューチャーシップでは、リーン開発の手法を指導するだけでなく、開発組織の現状分析、ゴール設定、戦略策定から計画、実行まで責任を持って支援しています。

弊社で進める組織改革の基本的な進め方は以下のようになります。

  1. 診断・現状分析
  2. ゴール(目標)設定
  3. 基本方針決定
  4. 行動計画
  5. 実行支援

このステップを進める中で、理論と現場で実践することのギャップを考慮して、確実に実行できる行動計画の策定を進めます。

 

本記事の内容

  1. フューチャーシップ製品開発の組織改革戦略
  2. 理論と実践のギャップを埋める手順
    1. 顧客価値を最大化するための手法
    2. 現状の課題や問題がどこにあるか
    3. そもそも何を目指しているか
    4. 譲れない拘り、染みついた文化の扱い
    5. 改革のために使えるリソース
  3. 開発組織の組織問題診断サービス

 

フューチャーシップ製品開発の組織改革戦略

弊社が進める製品開発組織の改革には、トヨタのリーン開発手法の理論をベースに、その他の手法を組み合わせて、最終的には各企業の状況をしっかりと分析した上で、それぞれの改革戦略を策定して実践していきます。

そのときに、診断・現状分析にTOC(制約の理論)の思考プロセスを使い、更に戦略の基本方針決定や行動計画の策定に関しても、TOCのフレームワークを活用していきます。

TOCの思考プロセスは、人々の思い込みを排除して、モノゴトをシンプルに的確に捉えるロジカルシンキングのトレーニングにもなることから、弊社のコンサルティングサービスでは、TOCのフレームワークを使ったエンジニア教育なども実施しており、この思考プロセスで得られた本質を掴む能力をリーン開発手法実践のベースと位置付けてもいます。

さらに、リーン開発の手法を展開する中で、顧客価値を理解して顧客価値を最大化する製品企画を行うために、ジョブ理論を活用します。

弊社で推奨する組織改革戦略の立て方を下図に示します。

 

 

大事なポイントは、リーン開発手法は、手法を学んだ段階では理想論を理解したに過ぎないことを理解し、それを現場で実践するときに、組織の現状とゴールのギャップを深く理解し、理想論をどのように実践するかの戦略を立てる必要があることです。

 

理論と実践のギャップを埋める手順

 

トヨタ式リーン開発の重要な構成要素は、

  • セットベース開発
  • チーフエンジニア制
  • A3報告書文化

の3つであります。

理論としてのリーン開発手法は、チーフエンジニアという強力なリーダーシップのもと、全社で技術やノウハウを「知識」という会社の重要な資産として扱い、知識を獲得し活用するためのセットベース開発プロセスやA3報告書文化によって、学習し続ける組織でイノベーションを起こしていくという姿を教えてくれます。

リーン開発による製品開発プロセスや、製品開発組織の運営方法は、ひとつのベストプラクティスとして良い見本にはなると思いますが、どの企業でもまったく同じように適用できるとは限りません

つまり理論と実践(あるいは理想と現実)とを整合していかなければならないわけです。

理論と実践とのギャップを埋める内容は、以下のようなことが考えられます。

  1. 顧客価値を最大化するための手法
  2. 現状の課題や問題がどこにあるか
  3. そもそも何を目指しているか
  4. 譲れない拘り、染みついた文化の扱い
  5. 改革のために使えるリソース

1.顧客価値を最大化するための手法

リーン開発手法の中で、顧客価値の探求については、一つの得るべき知識としてセットベース開発の中に組み込まれる形で進めることになっています。

この考え方を踏襲し、さらに具体的な方法として、弊社ではハーバードビジネススクールのクリステンセン教授らが提唱するジョブ理論を活用することを提案しています。

ジョブ理論は、マーケティング手法として日本でも注目されていますが、製品軸の考え方を完全に排除して、製品と関係なく顧客が成すべき仕事(Jobs to be done)を見つけていくことで、100%顧客視点でイノベーションを起こしていく手法になります。

コトラーのマーケティング理論(3.0)とも親和性が高い理論なのですが、具体的なフレームワークが提示されていないため、あくまで考え方を取り入れていく理論です。

弊社では、このジョブ理論のフレームワークを独自に定義して、リーン開発手法と連携させる開発プロセス構築を提唱しています。

関連記事:ジョブ理論を実践するためのフレームワークを教えます

 

企業によって取り扱う製品は様々であり、対象とする顧客もまちまちです。

もともとの顧客との関係性、距離感もまったく違うのですが、ここでしっかりやるべきことは、顧客の行動を製品とは少し離れたところで、ストーリーとして捉えることです。

また、顧客にとっての企業の価値は何か、顧客はどんな進化への欲求を潜在的に持っているのかなど、マーケティング理論の考え方を取り入れながら、アイデアを広げていくためのフレームワークを実践していきます。

出てきたアイデアを仮説として取り扱い、仮説検証を小さなサイクルで検証していきながら、本当に市場で顧客が受け入れる製品に仕上げていきます

 

2.現状の課題や問題がどこにあるか

どんな改革を進める場合でも、まずは、現状の課題、問題点を明確にすることは不可欠です。

弊社では、TOC(制約の理論)の思考プロセスを応用して、改革の最初のステップとして、製品開発組織に根本課題を見つけていきます。

組織改革における間違った考え方は、起こっている問題の一つ一つに手を打とうとすることです。

起こっている問題は、表面上の現象であることがほとんどで、組織内で起きている悪い現象は、多くの場合、因果関係によって連鎖していることがほとんどと言えます。

つまり、この負の連鎖を大元を見つけることが、改革で最初にやるべきことなのです

関連記事:開発組織における問題の構造化

 

多くの場合、組織問題の根本原因は一つか二つの中核問題に集約されます。

中核問題を見つけたと思ったら、それを仮説として、その問題を出発点にして起こるべき負の連鎖を考えたとき、それが現状の組織の姿と一致しているかどうかを机上で検証します。(TOCでいう現状ツリー)

現状ツリーが、現実の組織の状態を表していれば、中核問題の仮説が正しかったということになるわけです。

中核問題の発見は、戦略策定の出発点です。

 

3.そもそも何を目指しているか

組織改革を行うことで何を目指すか?つまりゴール、目標は企業によって違うのではないかと思います。

製品開発組織としてよくある目標には、確かにパターンがあるかもしれません。

例えば

  • 開発期間を短くしたい
  • 顧客が本当に欲しい製品を開発する
  • 開発中の手戻りをなくす
  • 全社一体となって無駄を排除したい
  • 学習し成長し続ける組織にしたい

などがありますよね。

もちろん、すべて達成したいことばかりではあるのですが、会社によって優先順位は違うと思います。

トップの想いがどこに重きがあるのかも考慮する必要があるし、逆に現場の想いだって大切です。

そもそもトップと現場の想いに大きな差があるとしたら、そのこと自体が大きな問題かもしれません。

理論としてのリーン開発手法は、実はこれらのすべてが達成できるものと言ってもいいと思います。

リーン開発手法の様々なエッセンスが、組織や開発プロセスにとって良い状態を引き起こし、その状態がさらに別の良いことを引き出すというような、ポジティブな連鎖によって、たくさんの良いことが起こるということです。

悪い症状の連鎖と全く逆のこと、正のスパイラルが起こるということです。

そういう意味で、目標は欲張ってもいいのかもしれませんが、改革戦略をシンプルにするため、最も重要なことを目標として挙げるようにしましょう。

ローマは一日にしてならず

組織にとっての優先度の高い目標、ゴールを設定したら、現状からスタートして、どうやってゴールに達成できるかを考えます。

このとき、組織改革のゴール達成は一日では出来ないことを理解しましょう。ローマは一日にしてならずです。

理想論でなく現実を考えるときに、高い目標を立てるほど、到達するまでの苦労もあるのだと考えて、いくつかの中間目標を設定します。

中間目標を設定することで、PDCAを小さく早く回すことが出来ます。

また、さらに大事なことは、中間目標を達成しながら、最後にはゴールを達成しようとするときに、様々な障害や副作用があることを予想しておいて、障害や副作用を克服するためのステップも同時に考えておきます。

文化を変える、ルールを変えるなどによって、少しずつ成果を勝ち取っていく過程をメンバーで共有することが非常に大事だと思います。

シンプルで驚きのある基本方針を立て、戦略の核とする

組織改革は、一日にしてならずではありますが、現状からゴールに到達するための基本方針は、できるだけ効果的で有用なものにしたいですね。

この基本戦略は、組織改革の核となるものであって、誰もが考えつくものではなく、意外性のあるものでかつシンプルなものを考えたいです。

シンプルで驚きの戦略が大きな成果を上げる例は、織田信長の桶狭間の戦い、ネルソン提督のトラファルガー海戦などが証明しています。

複雑な戦略は、行動を起こす時点で失敗することが多いのだと思います。

TOCのフレームワークを使う弊社のやり方では、この基本方針は2つか3つの新たに作り出す状態として定義します。

未来に向けたポジティブな連鎖を図にする

2つか3つのシンプルで驚きの基本方針が決まったら、その基本方針の状態からポジティブな連鎖が生まれて、最終的にゴールを達成した状態に繋がるかどうかを机上で検証します。

基本方針の状態から、「だからどうなる?」式で、因果関係で次に起きる状態を考えていき、その連鎖の先にゴールがあるかどうかを検証するのです。

基本方針を導く方程式はありません。

現状の問題(現状ツリー)、トップの想い、現場の想いなどを総合して、どんな状態を目指すことが会社にとって最良なのか、そのアイデアを出すときに思い込みが排除できているかなどをチームで討議しながら、アイデアを出していきます。

出てきたアイデアをベースに、そこからどんなポジティブな連鎖が起きるのかを検証していき、その連鎖図を眺めてみて、それが会社が目指すべき姿を現しているかをチェックします。

納得できなければ、アイデア出しに戻ってもう一度初めから考え直す必要もあるかもしれません。

企業の最終目的は儲けること

ここで大事なことをリマインドしておくと、すべての企業の最終目的は「儲けること」だということです。

社長の立場で考えると、開発期間短縮という目的も、顧客が喜ぶ製品を開発することも、最終目的である「儲けること」に繋がらなければ何の意味もありません。

なので本来は、例えば開発期間短縮という目標の達成だけでは不十分ということです。

ただし、開発期間短縮や顧客価値の高い製品開発が、その後の流れで利益拡大につながる確証を持っているのであれば、開発組織の目標として開発期間40%短縮などの目標を持つことは間違いではありません。

最終目的である「儲けること」を達成するための中間目標と考えて、戦略を練るのだということを忘れないことが大切です。

 

参考記事:「ザ・ゴール2」から学んだ思考プロセス

 

4.譲れない拘り、染みついた文化の扱い

改革をする、あるいは何かを変えるときの最大の障害は、その組織の譲れない拘りや染みついた文化ではないでしょうか。

単に「習慣」と言ってもいいかもしれません。

トップや中間マネージャー、あるいは現場でさえ、何かを変えようとすると抵抗する気持ちが出てくるのは、「習慣」が無くなることへの恐怖があるからなのかもしれません。

時にはその習慣に関連した「既得権」のようなものが、誰かの手から失われるというはっきりとした背景がある場合もあります。

なんとなく、その「習慣」を壊すことが良い方向に向かうとは思えない、という反対意見も多いように思います。

また、その「習慣」を壊すことで、こんな「副作用」があるとか、こんな「障害」があってうまく行くわけはないということを言う人も出てきます。

改革の一番難しいところだと思います。

経験上、このような「譲れない拘り」や「染みついた文化」を壊すことへの反対意見は、多くの場合、強い思い込みによる判断が多いのですが、ただし、これらの意見を強行突破するのも賢明とはいえません。

対処法は2つです。

  • 反対者を納得させる(説得する)
  • 拘りや文化を残して改革を進める

どちらも有力で、反対者を納得させるためには、反対意見の元になっている「良い方向に向かうとは思えない」「障害」「副作用」に対して、一つ一つ納得させられる説明をしていくことです。

完全な形での改革に拘るわけですが、妥協のない改革案であるため、道のりも険しいことは覚悟が必要です。

拘りや文化を残しつつ、改革できるところを一緒に探すということは、ある意味、妥協点を探していくということです。

ベストプラクティスとして例えばリーン開発を取り入れることを基本とした改革であれば、理論の中の本質を丁寧に学んで、現状の課題を少し残したままで、どうしても改革したい部分に焦点を当てた改革になります。

この場合は、達成目標を絞ることによって、目標の特化した形での改革案を作っていくことになります。

完全な形の改革ではありませんが、限られた変化で必要な効果を求めるので、実践面では楽になるかもしれません。

改革にかかる期間も、完全な形の改革に比べると短期間で達成できる可能性もあります。

改革の効果、範囲と難易度とのトレードオフになるのだと思います。

 

5.改革のために使えるリソース

改革を実行するために使えるリソース、つまり人とお金と時間がどれだけあるのかということもとても重要なことです。

これに対する答えは、トップの覚悟がどれくらいあるのかを直接反映するのかもしれません。

トップ自身がどれくらい関与する気持ちがあるのかは、改革の成功に大きく関わってくると思います。

現場任せにしては改革は絶対に成功しません。

よくある間違いは、トップが中間マネージャーに任せたと安心して、直接の関与をしないことです。

中間マネージャーがよほど優秀であれば別ですが、トップがあまり関与しないものに、中間マネージャーはあまり力を注がないものです。

結果、現場に丸投げになってしまいます。

改革は、普通は既存の仕事をこなしながら進めることが多いと思います。

既存事業の継続と、改革とでどちらが優先度が高いかをトップが曖昧にしたまま、両方とも大事だなんて言っていると、中間マネージャーは目に見える成果が出やすくて、間違いなく評価される既存事業の継続を優先します。

改革を実践して成功させるためには、トップが本気になることが一番重要です。

次に重要なのは、改革に許される時間とそれを達成するための人的リソースの配分です。

精神論で半年でやれ、少ない人数でやれでは、うまく行くものも失敗します。

正しい戦略のもと、しっかりとした行動計画、リスク管理をやって正確に時間と必要リソースを見積もった上で、ストレッチをかけるにしても120%で頑張れば達成できるレベルでストレッチをかけ、マネージメントのフルサポートをすることが大切です

 

実践レベルで改革のステップを考えると、通常は

  1. モデルプロジェクトで成功例を作る
  2. 成功例を全社展開するための新しいプロセスを構築する

の2ステップとなります。

モデルプロジェクトには、できるだけ優秀なメンバーをアサインし、様々な障害をマネージメントのサポートで乗り切って、会社としての成功体験を勝ち取ります。

全社展開は、全社の組織機能にも関わるので、全社レベルでトップ自らが先頭にたって進めるべきだと思います。

 

参考記事:

製品開発プロセス革新における中間管理職の役割

フューチャーシップ開発革新の進め方と必要時間

 

開発組織の組織問題診断サービス

 

製品開発組織の組織改革を実践する方法についてお話ししてきました。

特に、リーン開発手法という理想論をどうやって現場で実践していくかというところが鍵になると思います。

まず、最初の一歩は、リーン開発やジョブ理論などの理想論の本質を理解することです。

 

理論の本質を理解し、これを取り入れてみたいと思ったら、次にやるべきことは自社の現状分析です。

自社の様々な組織問題の中核となる問題、複数の悪い現象の根本にある問題を発見していきます。

弊社では、「開発組織の組織問題診断サービス」を提供しています。

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