開発革新コンサルに興味があるが不安もある

製品開発を変えないと会社が成長しないという想いはあって、開発革新のコンサルを検討してみたいが、具体的にどんな進め方なのか、必要な期間はどれくらいかかるかを知りたい。

ゴールをどう設定するか、現状がどんな状況なのか、現状の組織体制はどうなっているか、などの検討が必要ではありますが、典型的なモデルで大まかな流れと成果を刈り取るまでの期間の考え方についてご説明させていただきます。

本記事の内容

  • 開発組織の現状分析と開発革新ゴール設定
  • トップ・コミットによるモデルプロジェクトで成功体験
  • 個人と組織の意識改革と新開発プロセス定着までの道のり

開発組織の現状分析と開発革新ゴール設定

 

現状分析

弊社で製品開発革新、組織改革の支援をさせていただく際には、まず、現状の課題について詳細にヒアリングをさせていただきます。

現場エンジニアの方、マネージメントのメンバーにもお集まりいただき、現状の課題を吐き出していただきます。

どんな現象が起きているか、それはいつ頃からか、それに対してどんな手を打ってきてどんな結果だったかなどを聞いていきます。

更に、組織の方針管理で短期、中長期の計画や、組織変更の経緯などのお話もお聞きします。

そのうえで、今回の改革に着手して目指すべきゴールを話し合って設定させていただきます。

これが通常の改革着手までの進め方ですが、コンサル活動の進め方や期間について説明する目的で、モデルケースを考えることにします。

これまで支援させていただいた企業に共通する課題を考えて以下のような状況を考えます。

  • 組織規模 : 製品開発者約100人
  • 開発製品 : 電機製品
  • 創業年数 : 50年以上

 

開発組織の主な悩み

 

  • 日程遅れが常態化
  • 開発途中での手戻りが多発している
  • 類似の問題が繰り返される
  • 若手エンジニアの伸び悩み(ベテランからの技術伝承が弱い)
  • 画期的な新製品がしばらく出ていない。

 

コメント
製品のラインナップをライバルの動きに対抗して拡充している。高齢化も進んでいてベテランが知識を持ったまま退職してしまい、技術の一部がブラックボックス化し始めている。社内のコミュニケーションが悪く、特に技術に関する現場レベルのコミュニケーションが希薄になっている。若手は、雑用や突発的な仕事に時間を取られていると感じており、自分の技術が伸びるチャンスが少ないとも感じている。

 

ゴール設定

このような状態から、トップマネージメントと話し合って設定する目標を以下のように仮定する。

  • 開発期間の30%短縮
  • 市場問題の発生数を一桁減
  • 技術伝承、技術コミュニケーション強化の仕組み作り(具体的にA3報告書文化の定着)

 

基本方針

現状分析とゴール設定から、開発革新の基本方針として、トヨタ式リーン開発手法を活用していきます。

トヨタ式リーン開発は、

  • セットベース開発
  • A3報告書
  • チーフエンジニア制度

という3つの重要要素からなっています。

それぞれの要素から、改悪するポイントをまとめると、

セットベース開発

未知のこと、チャレンジすることを小さく早い学習サイクルを構成して、わからないことを一つ一つ積み上げていく開発方式に変換します。

最初から製品全体の試作機を作って、バグや問題点を修正していくやり方は、問題同士が複雑に絡み合って問題解決に余計な時間がかかっています。

さらに、開発スタート時に機種構想を1つに決めてしまっているために、構想時の製品よりいい製品、顧客にとって驚きの製品が生まれにくくなっています。

開発中の気づきが製品に反映されにくい体制になっているのです。

現状のプロセスの中の制約事項に注意しながら、セットベース開発の考え方の良い点を取り入れていきます。

A3報告書

トヨタ式リーン開発におけるA3報告書は、単なる報告書ではありません

個々の技術やノウハウに関する「知識」を会社の重要な資産と捉えるところからスタートします。

その重要資産を全社で守り、活用していくためのツールがA3報告書という位置づけです。

セットベース開発の学習サイクルで得た新たな「知識」を組織の責任でA3報告書として残します。

また、過去の品質問題を絶対に繰り返さないように、開発プロセスと過去の問題に対するノウハウをリンクさせます。

質の高い報告書として会社に蓄積していくために、上司と部下、あるいは組織全体でひとつのA3報告書を作り上げるという文化によって、技術コミュニケーションを活性化させます。

チーフエンジニア制度

トヨタのチーフエンジニア制は有名で、真似する企業も多いのですが、実はトヨタのチーフエンジニアのレベルが高すぎて形だけを真似しているにすぎない企業が多いのが実情です。

チーフエンジニアは、開発のリーダーであるだけでなく、企画、生産、購買、サービス、営業まで、該当製品に関するバリューチェーン全体の責任者であり、すべてに精通していなければなりません。

こんなスーパーパンを一朝一夕には作れないことは誰でもお解りかと思いますが、チーフエンジニアを育てるのは10年単位での取り組み、しかもトップ自らが先頭にたって進めなければ、おそらく最後まで真似できない制度だと思われます。

ただし、そうは言っても、開発にフォーカスすれば優秀なリーダーは各企業に存在するはずです。

優秀な開発リーダーを継続的に排出するような伝承システムを開発プロセスに入れていきます。

 

トップ・コミットによるモデルプロジェクトで成功体験

 

製品開発革新で最も重要なことは、早い段階で成功体験を作ることです。

モデルプロジェクトを設定し、理想の状態で理想の結果を得ることで、メンバーと組織が「やれるぞ」という気持ちになれば、改革は半分は成功だと言えると思います。

ただし、これまでの開発のやり方と、新しいやり方のギャップが大きければ、様々な障害が立ちはだかります。

この障害を取り除くには、トップの強力なサポート、いやトップ自らの参画、ないしコミットメントが必要です。

  • モデルプロジェクトを他の仕事から隔離すること
  • できるだけ優秀でやる気のあるメンバーをアサインすること
  • 他部門の協力が得られるような配慮

が少なくとも必要です。

トップのコミットをいただいた上で、モデルプロジェクトで成功体験を得るまでの大まかな流れは以下のようになります。

  1. 対象プロジェクトの決定とメンバー選定
  2. プロジェクトメンバーへの基礎教育
  3. プロジェクト計画策定
  4. プロジェクトの実行

対象プロジェクトの決定とメンバー選定

モデルプロジェクトを決していただきます。

モデルとは言いながら、実際に商流に乗らない製品ではだめですが、しかし、営業サイドが待ち構えているような製品でもNGです。

製品そのものへの期待が大きいと、従来の価値観に流されてしまうからです。

一番いいのは、市場探索機のような将来に布石を打って置きたいけど、営業現場は今のものとしては期待が高くないものというのが好ましいです。

メンバーのやる気も維持できて、しかも過剰な期待がかからないというのがベストかと思います。

メンバー選定は、既存開発から根こそぎ優秀な人を持ってくるわけにはいかないので、ポテンシャルの高い若手と、ある程度経験があって重要ポイントを抑えられる中堅をバランスよくアサインいただければ理想的です。

関連部署との人間関係も作っていかなければならないので、このプロジェクトのトップには、部長クラスか役員クラスのお名前をお借りできればさらに理想的です。

プロジェクトメンバーへの基礎教育

対象プロジェクトが決まって、メンバー選定が終了したら、まずはメンバーにリーン開発手法を習得していただきます。

リーン開発の手法を学ぶだけでなく、セットベース開発で小さな学習をするために、どんな実験を設定するか、演習等で体得します。

A3報告書は、実際に報告書を書くことで、会社の資産にするために必要な質の高い報告書、組織として質を高める方法をこれも体得していただきます。

A3報告書については、のちに全社展開するときに、このプロジェクトのメンバーがエバンジェリストになってもらう必要があります。

チーフエンジニア制度については、理想的な状態を理解してもらった後、現実の開発にフォーカスしたプロジェクトリーダーとして最低限必要なレベルへの育成を考えたいと思います。

会社によって、リーダーとして必要な教育がどこまでされているかが、これまでの経験で結構バラついています。

教育期間は、メンバーを100%隔離して集中できれば、フルで5日間~10日間(基礎レベルによる)程度必要です。

メンバーに現状の仕事があって、100%隔離出来ない状況では、週1回の教育で1か月~2か月、月2回なら2か月から4か月、月1回なら5か月~10か月となってしまいます。

できれば集中して早く終わらせることが望ましいのですが、これまでの経験では現状の仕事から引きはがせないケースが多く、数か月単位でかかってしまっています。

プロジェクト計画策定

プロジェクトメンバーが手法を理解できるようになったら、その知識を使って対象プロジェクトの実行計画を立てます。

今までのやり方を排除して、理想的で自分たちがやりたい方法でプロジェクトのゴールを目指します。

ネガティブな意見、つまり考えられる障害や副作用などがたくさん出されると思います。

予想される障害や副作用にどう対応するかも重要な計画になります。

未知なことへのチャレンジにどの程度時間を使えるか、という迷いも出てくると思います。

基礎的な学習の時間はできるだけ余裕を持って取ります。

リーン開発の肝は、フロントローディングを厚くして、技術の詰めが終わったら、詳細設計以降は一発で高い品質のものが出来るということなので、それを信じて手戻りのない、品質問題を後で出さない開発を実現していきます。

計画策定にかかる期間も、初めてでもあり十分に取りたいと思います。

少なくともこの段階ではメンバーを100%隔離したいですが、その状態で短くても2か月、製品コンセプトまで含めての計画であれば3か月~4か月は取りたいです。

メンバーが自分たちで策定し、製品コンセプトにも構想時からの改善の余地も残して、夢のあるエキサイティングな計画になるはずです。

計画策定期間に出た障害や副作用に対する対応方法は、トップへの提案という形でプロジェクト開始までに解決しておく必要もあり、計画策定期間にこの解決までやっておく必要もあります。

プロジェクト計画は、トップへの報告でけじめをつけてプロジェクト開始に移行します。

プロジェクトの実行

プロジェクトの計画が立ったなら、あとは計画通りに実行するのみです。

プロジェクト期間は、製品によって違いがありますよね。

製品化まで通常6か月かかる製品もあれば、1年、あるいは1年半かかるものもあります。

電機製品などでは、通常1年半くらいはかかるのではないでしょうか。

今回の目標は開発期間30%減ですから、12か月→8か月強、18か月→13か月弱といのが目標ですね。

開発期間短縮の目的も大事ですが、手戻りをなくすこと、市場品質問題を出さないこと、そして顧客に認められる良い商品を出すことの方が大事なことだと思います。

初回ということもあり、開発そのもの以外の原因で期間が延びることもあるので、まずは期間は通常と同じ期間での成功体験と考えておきましょう。

さて、冒頭に申し上げたように、周りは大きな期待を持たずに待っていたモデルプロジェクトの完成で、メンバーは成功を予感し、改革への自信をつけることと思います。

周囲は、期待以上の成果が出たことにそれなりの評価をして、もし、製品そのものが市場で評価されるようになると手のひらを返したように、プロジェクトメンバーを称賛するようになります。(これは実体験です。)

プロジェクトの開始からここまでをまとめると、

  • メンバー教育 : 1か月
  • 計画策定 : 2~3か月
  • プロジェクト実行 : 通常の開発期間

というところまでが、最初の成功体験までの期間ということになります。

さて、これが改革の前半部分となります。

 

個人と組織の意識改革と新開発プロセス定着までの道のり

 

さて、選定したプロジェクトメンバーの努力によって、会社内に成功体験がひとつ出来上がったわけですが、次の段階でこの成功を全社に広げていかなければなりません。

これが思いのほか骨の折れる仕事になります。

従来のやり方に慣れた個人や組織、あるいは従来のやり方で居心地の良い想いをしている人たちにとって、改革は受け入れがたいものになる可能性があります。

改革に対する意識も、プロジェクトメンバーとは大きな差があります。

モデルプロジェクトを進めるのと並行して、意識改革活動には同時に着手します。

モデルプロジェクトで成功体験をした後、一気に意識改革と成功した開発プロセスを標準プロセスとして定着させる活動を加速していきます。

意識改革としてのA3報告書文化

前述したようにリーン開発において、A3報告書は単なる報告書ではありません。

「知識」を会社の資産として取り扱うための文化であり、マネージメントの道具なのです。

モデルプロジェクトのスタートと同時に、全社でA3報告書による文化改革を始めます。

どんな内容をA3報告書にするかは、企業によっても事情が変わりますが、おすすめとしては、

  • 品質問題の再発防止
  • ノウハウや経験を再利用する

ということを目的とした「知識」蓄積をしていくことだと思います。

そのほかには、

  • 顧客の要求調査、クレーム情報
  • 現場からの改善提案
  • アイデアを実用化する過程

なども資産として再利用価値のある情報だと思います。

意識改革として大事なポイント、陥りやすいポイントは以下になります。

  • ひとつのプロジェクトに特化したものを、他のプロジェクトにも適用できる内容
  • 誰に対する報告書で、何を伝えるかを明確にする(周囲もそれを注視する)
  • 上司は部下の報告書を徹底的に改善する努力をする(人材育成)
  • 書きたいことを書くのではなく、読み手が望むものを書く(読まれる報告書)
  • 報告書は報告者一人のものではなく、会社の財産という意識への変革

実は、言うは易しで、トップから現場まで、このような価値観に変えていくのは、トップからの強力なメッセージが必要です。

これまで、A3報告書による改革をいくつかの会社で実施してきましたが、現場任せにすれば、結局一部の人たちにしか浸透せずに、改革そのものは遠い道のりになっていきます。

特にトップと中間マネージャの強い意思と、中間マネージャの報告書を指導する力を強化していかないと、形骸化していきます。

弊社のコンサルティングでは、徹底的なレビューと改善を繰り返し、中間マネージャーの育成、文化の醸成、現場コミュニケーションの活性化を進めます。

モデルプロジェクトの成功を見るまでの間に、A3文化を作ることで、組織全体の意識改革を進めます。

成功プロセスを全社に適用するプロセス改革

さて、モデルプロジェクトと並行して進めてきたA3報告書文化によって、社員の意識改革も少しずつ浸透してきたところで、モデルプロジェクトが完成します。

ここで気を緩めずに、この機運にのって改革を一気に進めていきます。

具体的には、モデルプロジェクトで成功した改革内容を、全社の標準プロセスとして採用していきます。

モデルプロジェクトに参加したキーメンバーと、プロセス改革を推進する新たなチームを組織横断で立ち上げます。

このチームの活動に対してもトップの支援、コミットメントが重要になります。

モデルプロジェクトの計画と実績の差異から、うまくいった点と、うまく行かなかった点を抽出します。

また、モデルプロジェクトの遂行にあたって、障害となること副作用となることに対して対応策を立てて実行した結果なども考察します。

トップの支援で特別な扱いで障害を乗り越えたのであれば、標準プロセスとする場合には改めて対応方法を決めなければなりません。

特別対応では対処できたけど、ノーマルな状態ではどうしても避けられない問題なども出てきます。

よくある制約としては、金型手配などの長手の日程確保をしなければならないものと、短納期で対応できるものとが混在し、全体日程を確保するために長手のものに対する技術探索の時間が制約されてしまう問題などがあります。

従来の試作をして、問題をつぶしてという固定概念を取り外さない限り、結局、プロセスを変えられないという事態が往々にして起きます。

知恵を出し合って、思い込みを排除して、かつ企業ごとの事情に対する解決策とプロセスをバランスを取りながら様々な角度から検討して、自社独自の新たなプロセスを作っていきます。

実は、モデルプロジェクトの実行よりも、この独自プロセス策定の方が何倍も難しいのだと思っています。

改革プロセスの検討を進めている間も、他の製品開発は進んでいます。

現状のプロセスから、新しいプロセスへの移行をどんな手順で行うかなども大きな課題となります。

仕組みを変えるための検証作業などが、現状のプロジェクトを邪魔することは出来ません。

さまざまな制約を乗り越える改革になります。

改革チームの活動において、モデルプロジェクトと同様にメンバーを完全に隔離できればいいですが、各機能組織からキーメンバーを集めているのであれば、現状の仕事から完全に切り離すことは、モデルプロジェクトの時以上に難しいと予想されます。

そうすると頑張って進めても、この改革チームの提案がトップに示されるまで、おそらく半年くらいは必要かと思います。

その後、トップマネージメントも巻き込んで、半年くらいかけて改革の実行方法が定義され、組織改造などを伴って新たなプロセスがソフトランディングされていき、PDCAを回しながら、新プロセスが定着されるのは、早くても2サイクル(最初の製品開発の次の製品)目くらいになります。

 

まとめ

開発プロセス改革の成功例における期間

開発革新を始めて、新しいプロセスが定着するまでは一体どれくらいの期間が必要かという質問をたくさんお受けします。

ここまでお話ししてきたように、改革の道は平坦ではありません。

これまでの成功事例ですが、ある検査機器メーカーで、社長と開発本部長が自ら先頭にたってリーン開発を導入した成功例でみると、

  • 最初のモデルプロジェクト成功まで2年
  • 改革プロセスの定着まで5年(改革開始から)

というところが現実的な答えかと思います。

この会社の当初の開発期間が16か月、改革後には11か月ということです。

 

 

開発期間の他、市場問題の発生が大幅低下(数字は非公開)、手戻りは限りなくゼロ、社員の付加価値業務比率(雑用でない生産活動の比率)が20%から80%に改善したということです。

改革の期間は、製品開発の標準的な期間や、トップの介入度合いによって大きく変動します。

改革は手法の展開だけではできませんが、手法の助けは絶対に必要だと思います。

いっしょに戦ってみたいと思われたなら、一度、面談させていただきたいと思います。

下記よりメールアドレスを入力いただければ、こちらからコンタクトさせていただきます。

 

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